アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(17)勇サイド
-
俺の両親はかなり変わり者だ。
有名な企業を社長を務めている父にその父の秘書をしている母。
一般家庭とはほど遠い家庭であったのだが両親はとても庶民派であった。
両親曰く自分達の企業は利用者があってこそのものだと言っているため一般人と同じ立場で物事を考えようとしている。
俺もその影響か普通にコンビニだって行くし自分の買いたいものは自分で買いに行く。
よその金持ちの息子ならそんなことはしないのだろう。
しかし俺の両親はあんな感じなので俺自身も考えは庶民派によっている。
今日も授業が終わり寮へ帰ろうとしたら急に電話両親から電話で口コミがとてもいいお店を見つけたから食べに行こうと言われ俺は家族で外食に行く羽目になった。
両親はなにが嬉しいのかとてもニコニコしている。
両親に連れられやってきた先はよく見かけるような焼肉屋さんだった。
両親と俺は店に入って行く。
店員に案内され俺たちは店内がよく見えるテーブル席に行く。
母さん達は相変わらずはしゃいでいる。
あーそういえば焼肉は初めてかー。
そんなことを思いながら俺はメニューを目に通す。
店内は相変わらず騒がしい。
俺たちは注文するものが決まり店員に声をかける。
「すいませ〜ん。注文お願いできますか?」
母がそういうとどこからか店員の声が聞こえる。
「はーい。今向かいます。」
少し聞いたことのある声が聞こえる。
店員らしい人が駆け足で俺達のところにくる。
頭にバンダナをつけお店指定のエプロンをつけている。
顔はあまり見えない。
「おまたせしました。ご注文は?????」
店員が顔を上げて注文を聞く。
店員に目をやる。
すると学園で見慣れた顔が目の前に映る。
「赤峰?」
俺は思わず口を開く。
赤峰も俺に気づいたのか驚いたように口を開く。
「南条?」
お互い混乱する。
え??なんで赤峰がこんなところで働いているのか?
それより目の前の奴はほんとに赤峰なのか?
俺の頭を中はハテナだらけだ。
「もしかして勇のお友達?」
「いえ、友達というほどの仲では」
母さんが俺達の様に思わず口を開く。
赤峰は俺と友達と思われるのがそんなに嫌なのかすぐに口を開いた。
こいつ相変わらず失礼な奴だな。
俺は赤峰の顔をジーッと見る。
「えーと。ご注文は?」
赤峰は俺から目線を逸らしながら注文を聞いてくる。
手慣れた感じに注文を聞き取り紙に書いて行く。
注文が終わると母さんが赤峰に問いかける。
「あなたも勇と同じ学園に通っているんでしょ?大変じゃない?昼は学園で勉強で夜は働くなんて?」
そう言われ赤峰は少し固まるがすぐに笑顔に戻り平然と言い放つ。
「俺が望んでやっていることなので、仕事中なので失礼します」
赤峰はそう言い俺たちに頭を下げると走って呼ばれているところに向かっていった。
普段のあいつからは想像できない様な姿に俺はあんぐりかえる。
母さんはしっかりした子ね〜と言っており父はうんうんと頷いている。
隣で俺達の話を聞いていた人が俺たちに声をかけてきた。
「お前恵次と同じ学校に通ってんだって??恵次は学校ではどうだ????楽しくやってるか?????」
俺は突然声をかけられて固まってしまう。
両親達もそうだ。
近くの人たちは何故か俺達のテーブルに集まってくる。
「ケンちゃんとこの学生さん??ケンちゃん学校でかなりモテるら????」
チャラチャラしている女の人が俺に聞いてくる。
ケンちゃん????俺は思わず首を傾げる。
あの赤峰をケンちゃん????
「おい、あんま恵次の友達に言いよるな。困ってんだろ」
俺達の様子を見ていた男性が言い寄ってくる人達に言い聞かせる。
「だって学校でのケンちゃん気になるじゃん‼︎」
女性がそういうと周りの人達もそうだそうだと騒ぎ始める。
止めていた男性がそんな様子を見ながらため息をついている。
「こいつら煩くて悪いな。こいつらも悪気はないんだが恵次の事だからうるさくてな。」
男性が俺たちに声をかける。
「赤峰ってここではどう言った存在なんですか?」
俺は思わず男性に問う。
男性は顎に手を置き口を開く。
「素直でかわいいこの店の看板息子だな」
俺はあまりの衝撃に口が開く。
俺の様子を見た人たちが口々に問いかけてくる。
「なんだ?そんな反応じゃ学校じゃー恵次は違う感じなのか?」
俺は最初に声をかけられた人に聞かれる。
「なんというか赤峰って生徒会長を学園で務めてて学力も運動もなにに対しても一位とってるやつなんで。」
俺はそういうと周りが余計騒ぎだす。
「恵次すげーな‼︎ただでさえこんなところで働いて忙しいのに会長に学力一位なんて!」
「ほんとケンちゃんは努力家ねぇー」
周りの人達が赤峰のことをめちゃくちゃ褒め始める。
俺はそんな人達をまとめていた人に目をやる。
するとその人も俺の話を聞いて驚いたのかめっちゃ目を見開いていた。
「恵次、ただでさえ弟の事もあるのになんでそんなに無茶してんだよ」
男性がつぶやく。
俺は思わず男性に問う。
「それってどういうことですか?」
すると俺と男性の会話を聞いてた人が話に入って行く。
かなり酔っているのか顔が赤い。
「俺が恵次のことを教えてやんよ」
男性は笑いながら近くの椅子を持ってきて俺達のテーブルの近くに座る。
俺とさっき話していた男性が止めようとするが酔っている男性はお構いなしに口を開く。
「恵次わよ〜両親がいねーんだよ。父親は恵次が中学3年の時に他界。母親は行方知らず。当時の恵次に残されていたのは小学生の弟ただ一人。
周りの大人に施設に入る様に言われたが頑なに拒否してな〜。施設に入ればいつ弟と引き剥がされるかわかったもんじゃないからな。」
男性が語り続ける。
「弟は自分が育てるからだから施設は辞めてくれって必死に頼み込んでな。なんとか施設に入ることは免れたんだがなんせ中学三年生。一人で弟一人抱えて生きていけるほど現実は優しくない。
恵次は必死に店に頼み込んで自分を雇ってもらおうとしたんだ。だがまだ中学生であることから中々難しかった。
でも恵次を見捨てるほどここの奴らも鬼じゃなかったさ。
周りに秘密でなんとか恵次を雇ってな。ここにいる奴ら全員中学から恵次を気にかけていたもの達の集まりさ」
酔っている男性はカラカラ笑いながら周りを見つめている。
「学園には特待生として入学してなー。そんときはもう店はどんちゃん騒ぎ。みんなで恵次を胴上げしてなー。ありゃー楽しかったな。学費なんて馬鹿にならないほどかかるし恵次は弟の金も貯めなくちゃなんねぇー。
恵次はいつも弟が大学に行ける様に金を貯めなくちゃいけないって言っててな自分のことなんかお構いなしだ。
毎日学校で勉強して夜遅くまでここで働いてさらに弟の面倒をしながら家計を回す。」
男性は酒を思いっきり飲む。
「普通だったら逃げ出してるぜ。恵次はまだ17歳だ。やりたいことだっていっぱいあるだろうに弟、弟って。
こんなに苦労して大変なのにずっと笑ってこんなおっさんの相手なんかしてよ〜。
全く可愛くて可愛くて仕方がねーよ」
そう言いおえると男性は酔いすぎたのかテーブルにガンと顔をつけ寝息がたつ。
俺たち家族は固まってしまった。
この男性の言う話は信じられないものだった。
いつも澄ました顔をしているあいつがこんなに苦労して生きてきたとは誰も思うはずがないだろ。
両親達は何故かないているし。
「勇、今度恵次くんお家に連れてきてね」
母さんが泣きながら俺に言う。
俺は頷くことしかできない。
店員が料理を運んできたが俺は料理の味を全く感じることができなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 29