アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(23)恵次サイド
-
ついに今日という日を迎えることになってしまった。
俺はいつにもなく騒がしい外の様子を眺めながら想いに耽る。委員の奴らは忙しなくグランドを駆け回り整備点検などをしている。
始まる前からピリピリしているこの状態だと体育祭が開催されたらどのようになるか。
「何余計なこと考えてんだ」
顔に出ていたのか窓の外を見つめている俺に南条が声をかける。南条の手には警備紐やら護身用の棒やらかなり物騒なものが握られている。
「ただでさえ毎年体育祭で問題が起きるのに今年はあいつらもいる。そりゃー頭くらい痛くなるだろ」
やってらんないなと頭を掻きむしりながら言えばなるようになるだろと南条は気軽そうに風紀のばんしょうを右腕に括った。
「何かが怒ってからじゃ遅いだろ。最悪取り返しのつかない事が起こったらこの学園は金の卵の集まりだぞ。絶対いくつかの大手企業の動きが止まる」
これだから金持ちは嫌なんだなどと軽く悪態をつけばお前の言っている金持ちなんて本当の金持ちからしたら下級レベルだどと軽く鼻で笑われる。
悪かったな‼︎一般家庭の出で‼︎
「そんな深く考えんなって。ほら先代の奴らのしでかした事を上回る奴らなんてそうそう現れるもんじゃねーし比較対象が有ればたとえ思った問題でも軽く受け止められる」
問題が起きる前提で話を進める南条の潔ぎのよさを俺はすごくいいと思っている。人間どこか区切りをつけることで背負う物を軽く思えたりする。
諦めも一種の生き方だ。無理な物は無理と切り捨てることも大事なことなのだと南条と話していると感じさせられる。
それに先代の上を上回る奴らなんてたとえあいつらでも無理だろう。先代が何をしでかしたかあえて言わないがただ凄かったとだけ語っておこう。
「そうだな。とりあえず目標は死人を出さないくらいなものにしておくか。」
俺も吹っ切れたのかふざけた事を口にすればシンプルでいいんじゃないかなどと言われた。
南条シンプルの使い方間違ってんぞ。
そうこうしている間に準備は終わり体育祭が始まる時間が迫ってきた。
「そろそろ行かないとまずいな」
「ああ、お前会長様だからな。」
「まぁーな」
そう軽口をつきながら南条と外に出る。
今日は神も俺ら学生に味方したのか雲一つも見つからない体育祭日和だ。
クラスの奴ら気持ち悪いほどてるてる坊主教室に吊るしてたからな。
しかもウン十万もするハンカチをなんの躊躇もなく油性のペンを入れたところは流石の俺も引いた。
やっぱり俺とあいつら達の価値観はまったくもって反対なのだと改めで実感することができた。
もうあいつら達から渡されるものは何一つ受け取らない。
知らぬ間に何十万なんて貢がれていたら恐怖以外の何者でもないからな。
開会式は無事何事もなく終わりそれぞれ種目が行われとても活気があり賑やかな光景は広がっている。
生徒会に対しての視線が少しばかり痛かったが特にそれといったこともない。
これは問題も起きる事なく平和に体育祭を送れるのではないか????
そんな事をこもっていたやさき怒鳴り声が聞こえてきた。
声のする方へ視線を向けるとなんと400メートル走リレーしている最中にあの転校生と生徒が言い争いをしていたのだ。
こんなに早いフラグ回収今まで見たことがあるのだろうか
多分今の俺は死んだ魚のように生気のない目をしていただろう。
俺はなんとか人だかりを掻きむしり転校生達の元に行けば転校生はなんと一方的に生徒に向かい怒鳴り声をあげたり手を振り上げたりしている。
俺はすかさず止めに入るがゴリラではないのかと言わんばかりの無駄な怪力で一向に埒が開かない。
「おい‼︎年に一度の体育祭に何をやってんだ馬鹿野郎‼︎」
「俺は悪くねぇー!!!こいつが!!!わざと俺に当たってきたのがわるいんだ!!!!」
「ちがいます‼︎会長様‼︎この転校生が僕が走るレーンに無理やりねじ込んできたのです‼︎僕はその衝撃で体勢を崩し転んでしまったら急に怒鳴られて、、、」
生徒はそういうと転校生に責められたのが怖かったのか俺の背に隠れ泣き始めた。
そりゃー急に突っ込んでこられて怒鳴られたり手上げられそうになれば普通怖いよな。
俺は震える生徒を守るように手を広げて転校生が生徒に手を上げられないようにする。
むさ苦しい前髪とクソダサい牛乳瓶のメガネのせいで全く顔が見えないが頬が尋常じゃないほど赤いのかよほど頭に血が上っているようだ。
五月蝿いしキモいことこの上ない。
「お前俺よりそんなやつの味方すんのかよ!!!!おかしいだろ!!!!俺の方が被害者じゃねーーか!!!!」
「お前の言っていることが全く理解できないのだが。仮にこの生徒がお前とぶつかってしまったからと言ってお前が怒鳴り声をあげたり暴力を振るったりするなんでおかしな話だろ???当たったくらいでこんなこと普通するか????」
「うるせぇ!!!俺は将未達と約束したんだよ!一位になるって、、約束したから頑張ってたのにこいつが当たったせいで!!!!」
「は???お前クソだな???」
俺は思わずそう言ってしまうとそれを聞いたクソマリモがすごい勢いで俺たちに襲いかかってきた。
俺は思わず後ろにいる生徒を守るために背を向け生徒を抱きしめた。
あのクソ転校生はゴリラ級の怪力だ。
一般生徒が殴られれもしたら最悪の場合死人が出るかもしれない。
俺の今日の目標は死人を出さないだ。
俺は暴れ狂うゴリラの拳を喰らった。
ボキッ、、、、
あ、、これやっちゃいけない音だ。
そんな事を思った瞬間全身に強烈な痛みが走る。
「う‼︎」
思わず声が漏れかけた。
全身を襲うような強烈な痛みにさぞの冷や汗が出る。
体の痛さに胸にいる生徒を強く抱きしめる。
痛い、、これはかなり痛い、、、
強い衝撃で殴られたせいかうまく呼吸もできず頭に空気が回らない。
クラクラして気持ち悪い中で唯一わかるのは周りが俺たちを囲んで騒いでいる事だった。
次またクソ気狂いから攻撃が来るのではないかと警戒して生徒を抱きしめる。
耳がキーンとしてうまく音が聞き取れない。
これは流石にやばいな。
段々と目の前に霧が掛かるように見えづらくなっていく。
朦朧とする意識の中で何故か南条の声が聞こえた気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 29