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空きっ腹にアルコール流し込みゃ、当然だけど悪酔いする訳でさ……
「ゴメ……、吐きそ……」
智樹は口元を手で覆うと、バタバタとトイレに駆け込んだ。
「大丈夫ですか?」
便座に顔を突っ込み、激しく嘔吐する智樹の背中を摩ってやろうと手を伸ばすけど、
「大……丈………、うっ……」
智樹は首を横に振り、俺の手を拒んだ。
絶対苦しいだろうに……
「吐き出しちまえよ、全部……」
それで少しでも楽になれるなら、全部綺麗さっぱり忘れちまえ。
漸く吐き気も治まったのか、智樹がヨロヨロと立ち上がる。
瞬間、智樹の身体がフワッと傾いたかと思うと、そのまま膝から崩れ堕ちそうになった。
俺は咄嗟に伸ばした両手で智樹の細い腰を抱き留めた。
「ちょ……、大丈夫?」
色を失くした顔に問いかけてみるけど、智樹は小さく頷くのがやっとの様子で……
「少し横になったら? あんま眠れてないんでしょ?」
俺が言うと、智樹は一瞬ハッとした顔をして、咄嗟に視線を逸らしたように見えた。
しまった……、そう思った俺は、智樹の下瞼を指でなぞり、
「ここ、でっかいクマさん飼ってるよ?」
おどけて見せると、微かに智樹のの顔に笑が浮かんだ。
覚束無い足取りの智樹を支えながら、そっとベッドに横たえると、濡れたタオルを額に当てた。
寝息を立て始めたのを確認してから、青さを通り越して白くなった顔に指先で軽く触れてみる。
すると、
「なぁ、和人……」
すっかり眠っていると思った智樹の唇が静かに動いた。
「な、何?」
智樹はゆっくり身体を起こすとベッドに腰掛け、一つ深呼吸をすると、一気にそれを吐き出した。
そしてベッドの上に放り出されたダウンのポケットを探り、そこからクシャクシャになった封筒をを取り出した。
目の前に差し出された封筒を、俺は黙って受取った。
「これ、何?」
「中、見てみ?」
言われて封筒の中を覗き込むと、そこには数10枚の一万円札が入っていて……
「この金がどうしたの?」
俺は思わず目を見開いた。
智樹がバイトを辞めたことも聞いていたし、そんな智樹がこんな大金を持っているとは、到底思えなかった。
智樹は困惑する俺の手から封筒を取り上げると、口元だけを軽く歪ませ笑った。
「彼氏から聞いてんじゃねぇの?」
え……?
「どういう……こと?」
違和感を感じたのはこの人が雅也を、“雅也”ではなく“彼氏”と、そう呼んだから。
やっぱりこの人には嘘や誤魔化しは通用しない。
尤も、俺も嘘をつく気も、誤魔化すつもりもないけど……
智樹は俺の性格を熟知してる筈だから、自分では上手く騙せたつもりでも、きっと呆気なく見破られてしまうだろうから。
「智樹と雅也の間に何があったのかは、大体聞いてるけど、だけどその事とその金に何の関係があるの?」
「なんだ、そこまでは聞いてないのか……」
手にした封筒をヒラヒラさせながら、智樹はまた一つ息を吐いた。
「なんつーかさ、金稼ぐのって簡単なんだな」」
「何それ………、どういうこと?」
「どうもこうも、一回セックスしただけで、こんな大金貰えんだからさ、簡単じゃん?」
「ちょ、ちょっと待って? どういうことかちゃんと説明してよ」
雅也からは無理矢理抱いたことは聞いてるけど、金のことなんて一切聞いてない。
「目が覚めたらさ、置いてあったんだよ、コレが枕元に」
智樹は吐き捨てるように言うと、テーブルの上に封筒を乱暴に放り投げた。
ついさっきまでは色を失くしていた顔が、今は怒りからなのかなんなのか、紅潮している。
潤一君だ。
アイツは悪い奴じゃないけど、昔かっらことある事に金で解決しようとするところがある。
だからって智樹のことまで……、そんなの有り得ない。
「で、でもさ、智樹も知ってるでしょ、潤一君の性格。智樹が考えてるような意味はなかったんじゃ……」
「そうかもな……。でもさ、仮にそうだったとしても……」
唇を噛み、膝の上で硬く結んだ智樹手が、どんどん色を無くして行く。
俺はそこに、そっと自分の手を重ねた。
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