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黄色い皿を割ると、パタッと蛇の出現がやんだ。真ん中から生えて来たのも見たけど、やっぱアレが蛇塚の原因だったんだろうか?
ここに墓がある、ていうのは嘘じゃなかったらしい。
「母方のじーちゃんの、お姉さんの旦那さんのお父さんのお兄さんの……の相棒の墓なんだって」
ハマーが蛇塚を指して言った。
ただ、エラそうに言ってっけど、つまりは他人の墓だ。呆れて怒る気にもなんねぇ。
しかも墓石はナシか? いや、蛇塚が墓なのか。
「この間、じーちゃんが亡くなってさー。そんでオレの相続分が、『宝の地図』1枚だった訳」
そう言ってハマーがオレに見せたのは、蛇塚の後ろにXが付いただけの、スゲー簡単な地図だった。「黄色い盤の下」、「毒蛇注意」って下手くそな文字で書いてある。
つーか、これを宝の地図だと信じて行動するのがスゲーわ。
多分、今まで誰も信じてなかったんだろうな。
「いや、さすがにオレも半信半疑だったんだよー?」
ハマーが弁解するように言った。だから、依頼内容も誤魔化したらしい。
「だって、お宝があるなら、さっさと掘り出しに行けばいい話じゃん。そしたらうち、あんな貧乏じゃなかったのにさぁ……」
はあー、とバカ依頼人がため息をつく。
ため息つきてーのはこっちだっつの。
「で、『劫火の呪文書』持ってりゃ、一人で簡単に来れると思ったんだよね。でも、全然使えなくてさ。高い買い物したよー」
ははは、とハマーは陽気に笑い、両手で「お手上げ」のポーズをする。
おどけたように言ってるが、色々計算もあったんだろう。
だって最初から宝の地図なんか、にわか仲間に見せちまうと、最悪地図だけ盗られて……ってコトになりかねねーし。どんなヤツが引き受けてくれるかワカンネーしな。
今朝ミーハを見かけて、さぞ安心した事だろう。
……仲のイイ幼馴染だったみたいだし?
「あー、そう」
でも、まあ、分かった。
誉められたことじゃねーけど、納得した。けど、やっぱムカつく。
「ミーハがいてくれて助かったよ~、ホント、立派になったなぁ~」
調子よく褒めちぎられて、ミーハは嬉しそうにしてる。それも気に食わねぇ。なんだ、その笑顔。
つーか、気安く頭撫でんなよな。
「で? 話は分かったけど、これからどうすんだ?」
ハマーとミーハの間に割って入るように口を挟み、オレは宝箱をアゴで指した。
金貨がギッシリの、地面に埋まって朽ちた宝箱。
掘り出すことは出来そうだけど、朽ちてっから運ぶのは多分、難しい。
ハマーは、一応財宝を期待してたんだろう、大きなカバンを持っていた。けど、そんなカバンくらいじゃ、金貨の5分の1も入らねぇ。
「キラキラ、だねー」
ミーハは無邪気に、穴の中を覗きこんでる。
「アブネーぞ、触んなよ」
どんな罠があるかも知んねぇ。そう言うと、ハマーが「うえー」と震えた。
「罠って何だよ、イヤなこと言うなよー」
「さあな、呪いとかな」
冗談半分に笑いながら、ハマーをからかって溜飲を下げてると――突然ミーハが「あっ」と言った。
「あ、おい!」
止める間もなかった。
ミーハは宝箱の中に手を伸ばし……金貨の山の中から、一巻の呪文書を取り出した。
金貨だけじゃなかったらしい。
つーか、さすが呪文書には鼻が利くんだな。
「うお、て、『転送』、だっ」
『転送』――。
そりゃ、この朽ちた宝箱ごと、ふもとの村まで運べるってコトじゃねーか?
オレはハマーと顔を見合わせた。
「用意いーじゃん! スゲー、ご先祖様、スゲー!」
ハマーの喜びに、「いや、ご先祖じゃねーだろ」とツッコミを入れながら、オレはちらっとミーハを見た。
ミーハは勝手に呪文書を広げ、さっそく読みふけってる。
昼間、スペルショップをためらった時とは大違いだ。やっぱもう、トラウマはなくなったんかな?
じゃあ、もう悪夢は見ねーと思っていいんだろうか?
つか、さっき――『解毒』で思い出した、って言った時、「もう大丈夫」って言ったよな。
助けてくれたの、思い出したから大丈夫、って。
誰に?
背の高い誰か、か? 黒の鎧の? そいつのお蔭?
あれ、「オレがいるから大丈夫」じゃなかったんかよ?
じわっと腹の底が熱くなる。
『火球』や『治癒』の時、一緒にいた誰かってのも、そいつなんかな?
「前のお前」が一緒にいたヤツ。
どんな男なんだ?
この『転送』を覚えて使った時、また、ソイツのことを思い出しちまうのか、ミーハ?
ぐるぐると考えにふけってたオレは、ミーハの「いく、よー」という声を聞いて、ハッとした。
「え?」
顔を上げてミーハを見る。
ミーハはちょっと真面目な顔で、でも頬を緩めて、呪文書を片手にこっちを見てた。
オレと、ハマーを。
そして、杖を振り上げて言った。
「トランスファー!」
待て、ちょっと待て。オレに向けんな。
――そう思ったけど、口にするのはちょっと遅くて。
目の前で、白い光がカッとはじけた。
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