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その翌日もまた、タオと2人で狩りに出かけた。馬2頭にまたがって、再び同じ山道を行く。
昨日と同じトコで馬を下りると、また同じようにウッディコングに襲われた。
「来るぞ!」
タオの警告を聞くより前に、気配を感じて剣を抜く。
オレのレベルじゃ厄介なハズのウッディコング。けど、昨日さんざん戦った相手だから、動きも何となく予想できる。
剣を構え、コングをじろっと睨み付け、素早く攻撃を当てて行く。タオがどんな戦いをしてるか、横目で見てる余裕はねぇ。
ギャオーッ。歯をむき出して威嚇されたけど、そんなのに今更動じる訳もなかった。
「うらっ!」
逆に大声を上げながら、足を斬り付けて動きを弱め、胸を差す。
「今日もコングだらけか?」
「さーな」
タオに警戒を任せ、剥ぎ取りするのはやっぱオレだ。
昨日より今日の方が毛皮にダメージが少なくて、ちょっと嬉しい。けど、浮き上がりかけた気持ちがまた、ミーハのことを思い出してズーンと沈む。
全部消し炭になって剥ぎ取りさえできなかった日々を、懐かしく思うなんてどうかしてる。
ミーハと暮らしてたのはそんな長い期間じゃねーのに、どんだけ依存してたんだろう?
「また来たぞ!」
タオの声に顔を上げ、立ち上がって剣を抜く。
シャンッ、と涼やかな音を立て、双剣を構えるタオ。その背中はミーハと同じくらい小さいけど、やっぱ剣士で、アイツと見間違えることはなかった。
最初に3匹、次に2匹のウッディコングを仕留めた後、剥ぎ取った毛皮を馬に乗せ、昨日と同じように山道を上がった。
「コング、多いな」
「そーだな」
ハマー(馬)の手綱を引きながら、油断なく左右を見回すと、木立の奥にまたウッディコングらしき影が見えた。
すぐに襲い掛かって来ないのは、虫と比べてやっぱ知能が高いからだろうか?
「あいつら結構、頭いーよな」
ザザザザ、と鳴る葉擦れの音。
木立を揺らされると、パッと見どこにいるか分かんねーし、前のオレなら怖かったと思う。
けど、そんな誤魔化し攻撃も、慣れりゃ大したことに感じねぇ。
「来い!」
手綱を放し、剣を抜き、大声でサルを威嚇する。
ギャッ、と短く吠えるコング。
ガサッと揺れるヤブと木立。
タオが双剣を抜くと同時に、ビュッと銀の閃光がひらめく。天才剣士、「赤い閃光」。けどオレだって、いつまでも友達を見上げていらんねぇ。
右、左、と素早く位置を変えるコングを睨み付け、動きに惑わされず踏み込んで、剣を突き出す。
ドスッ、とした手ごたえと共に「グゥン」ってくぐもった悲鳴が聞こえて、心臓を一突きできたのが分かった。
一瞬湧き上がる達成感。けど、それに浸ってる余裕はねぇ。素早く剣を引き抜いて、次に襲い掛かるコングに備える。
ぶんっと振り回される長い腕、それをギリギリで躱して1歩下がり、敵が飛びかかるのを見越してぐっと踏み込む。コングの動きが見えてるって、自分でも分かった。
ギュオゥ……。弱々しい声を上げ、崩れ落ちるウッディコング。
オレが2匹倒す間に、タオは4匹も倒してて、やっぱスゲーなと苦笑した。
それにしても、ここまでウッディコングが多いのって、異常なんじゃねーのかな?
「セイタイケイが乱れてんのかもな」
タオが賢いのかどうか分かんねぇことを言って、肩を竦めた。
「生態系? 原因は?」
「どーだろ?」
適当に言ってんじゃねーかと思ったけど、野生児の勘は侮れねぇ。
「ピンキードラゴンのせいじゃねぇ?」
「ホントかよ?」
オレのツッコミに、肩を竦めるタオ。
こんな時ミーハがいれば、「うおっ、スゴイ!」なんて誉めまくって、更に大騒ぎになるんだろうけど、オレと2人じゃそうもならねぇ。
この地に不慣れなオレたちは、そもそも生態系を語れる程詳しくはなくて、どんだけおかしいのかも分かんなかった。
11匹目の剥ぎ取りを終えた後、「どーする?」とタオに言われた。
「このままもうちょっと進んで、また猿をやるか? それとも一旦出直すか?」
まだ来たばっかだっつーのに、コイツがこう言うコト言うのは珍しい。
ウッディコングばっかで飽きたのか? それとも、やっぱ天才の勘で、何か異常でも感じ取ってんだろうか?
「お前、飽きたんじゃねーだろーな?」
からかいながら訊くと、「そんなんじゃねーよ」って喚かれた。喚くとこが図星っぽくて怪しい。
ふっと笑って素材を抱え、2頭の馬の背中に乗せる。
オレだって、同じモンスターばっかじゃ飽きるけど、ようやく一撃で倒せるようになったばっかだし、もうちょっと慣れてぇ。
「20匹まで付き合ってくれよ」
苦笑しながら頼むと、タオも「仕方ねーな」って、更に狩りに付き合ってくれた。
「アル、上達したなぁ」
昨日に引き続き、しみじみと言われてちょっと照れる。
けど、ホッとするたびにミーハの顔と声が浮かんで、現状に満足できねぇ。
『アル君、スゴイ』
にへっと笑いながら、まっすぐな称賛を与えて欲しい。細い腕を巻き付けて、オレに抱き着き、キスして欲しい。
……あの熱い体を抱き締めてぇ。
ぶんっと剣を振り、ウッディコングの血を振り払って鞘に納める。
剣のレベルが上がったからか、龍玉の付与効果か、それともホントに自分の実力が上がったのか、判断できねぇ。
ただ、ミーハの側にいるだろうあの男――「黒の烈風」ルナには、まだまだ追いつけそうになかった。
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