アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
65
-
川辺での襲撃を境に、ウッディコングとの遭遇率が跳ね上がった。
「やっぱ、この近くに巣があんじゃねぇ?」
タオの言葉に、魔法使い側のリーダーもうなずく。
手分けして手っ取り早く探してぇとこだけど、人数が少なすぎて分けんのは不安だ。何よりオレも、今ミーハと離れたくねぇ。
5人で周辺を警戒しつつ、巣を探すことになった。
川沿いにねぇのは分かってっから、少しそれた場所をゆっくりと歩いて探す。
ざざざざ、と鳴る葉擦れの音。囲まれる気配。
「来るぞ」と声を掛けるまでもなく、魔法使いたちの攻撃が始まる。
「ウィンドカッター!」
ざくっと切り取られるヤブ。当時に飛び掛かってくるコング。勿論、ぼうっと眺めてる暇はねぇ。オレもタオも剣を抜き、襲い来るコングを斬り伏せた。
獣道とすら呼べねぇ、木々の間の細い隙間を縫って進む。
木から木へと飛んで移動するコングとオレらとじゃ、機動力が断然違う。けど、攻撃力じゃオレらの方が圧倒的だ。
ギャッ、ギャギャッ。ギャオーッ。ウッディコングどもが威嚇する中、剣を振り、魔法を放つ。
「右奥からも来るぞ!」
ミーハたちに警告しながら、軽やかにジャンプし、ぐっと剣を構えて胸を突き刺す。
「ウォーターアロー!」
「アーススティング!」
ミーハの呪文も、相変わらずキレがいい。ミーハの頼もしさは知ってたけど、なんだかその成長っぷりが嬉しかった。
「キリがねーな」
タオがそう言って、頭上の高い木を見上げた。また登って様子を見る気らしい。
「どうせ見えねーよ」
「分かんねーだろ」
緩い制止を振り切って、素早く高い木に飛びつくタオ。枝を掴み、あっという間に登ってく姿は、まるでサルだ。
「ふお、スゴイ……」
感嘆を漏らしながら、ミーハが口をぽかんと開けて見上げてる。
そんな無邪気な姿はオレの記憶にある通りで、可愛くて愛おしい。
「ああ、真似できねーよな」
ニヤッと笑いかけてやると、オレの方をちらっと見て、こくりと素直にうなずいてる。
けど、そんなほのぼのした空気は残念ながら長く続かねぇ。
ザザザザザ。ガサッ。葉擦れの音と共に、ギャギャッ、ギキッとコングどもの鳴く声が近付く。
キョッキョッキョッキョッキョッ。
その中に呼び声みてーな鳴き声が混じって、ドキッとする。
ギャギャッ。キョキョッ。キョッキョッキョッキョッキョッ。
いつもなら、気配を感じてすぐ囲んで襲いかかって来るのに。一体この呼び声は何だ?
「気ィ付けろ」
ミーハに告げ、魔法使いのリーダーに目を向け、ゆっくりと剣を抜く。
頭上からタオの声は聞こえねぇ。
ただ、ひらひらと数枚の葉が落ちて来て――。
グオォォォォッ!
そんな低い咆哮と共に、ピンキードラゴンにも似た威圧が向こうから伝わった。
ざわっと鳥肌が立ち、手足に力がみなぎってくる。
緊張と興奮。
「ボ、ス……?」
ぽつりとミーハが疑問をこぼし、樹上のタオが「デケェぞ!」と叫んだ。
グオォォォォォッ! 再び響く咆哮と威圧。それが飛んできた先に向け、魔法使いたちが杖を構える。オレも右手の剣を強く握り、咆哮の主が現われるのを待った。
ドン! 盛大な着地音と共に、衝撃波がビリッと伝わる。
ザザッ。大きな音を立て、低木のヤブが掻き分けられる。
ゆっくり見えてくる巨大なサル。
ウッディコングのボス? とても同じモンスターとは思えねぇ体格の違いに、パッと見た瞬間はギョッとした。
けど、ピンキードラゴン程じゃねーなって、同時に思う。
威圧も威風も、ドラゴンの方が数段上だ。
「アーススティング!」
魔法使いの呪文と共に、地面からデカいトゲが生えて、ウッディコングボスの足を止める。
ボスっつったって、さすが猿。すかさず木の幹に飛びついたけど、鈍いしデカいしでいいマトみてーだ。
「アイスアロー!」
「サンダーアロー!」
次々と繰り出される魔法攻撃。そのたびにボスは怯むけど、そんな痛そうにはしていねぇ。
皮膚が相当固ぇんだろうか? そういやピンキードラゴンも、倒すの時間かかったっけ。
ギャッ!
ボスを守るつもりなのか、ウッディコングらがが飛びかかって来た。
「ザコは任せろ!」
叫びながら剣を振り、サルどもを次々に切り払う。
まだ遠くにいるボスには、魔法での遠距離攻撃が有用だ。それが分かってるんだろう。魔法使いたちはザコに構わず、次々魔法をボスに放った。
グオォォン。よろめくボスの姿に、「効いてるぞ!」とミーハを励ます。
そうしてる内に、ボスの全身が見えてきた。
「デケェ……」
思わず呟きが漏れたけど、ドラゴン程の迫力はねぇ。
掴まってた木から着地した瞬間、ズシンと地響きがして、衝撃波が走る。ずんっ、と威圧も飛んできたけど、構わず飛び上がり、周りのザコを片付ける。
「木の下で足止めを!」
オレの指示に、リーダー格の男は理由を悟ったみてーだ。
「ウォーターアロー! ウォーターアロー!」
『水矢』をボスの足元に放ち、傷を付けつつ足元を濡らして――。
「アイスマウンテン!」
氷の魔法を足に放ち、ボスの動きを足止めした。
今だ、と叫ぶ必要もねぇ。
「うああああああーっ!」
偵察のために登ったままだった樹上から、そんな叫び声と共に、「赤い閃光」が舞い降りる。
ビュッと光る一閃。
重力を足した双剣がきらめき、ボスがどうっとその場に崩れ落ちる。
タオが地面を蹴るのと同時に、オレも高くジャンプして、起き上がろうともがくボスの心臓に向かって、背中越しに突き降ろした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
65 / 102