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誰がどうやって広めたのかは知らねーけど、オレらの名前は次に訪れた、3つめのオアシスまで届いてた。
伝書バトみてーのがあるのか、それともオレらより先にオアシスを出てったヤツが知らせたのか? もしかしたら、声だけ届けるような魔法でもあるんだろうか?
「あんたたちが『赤い閃光』と『蒼風剣士』か?」
オアシスに入るなり、値踏みするような目で二つ名を呼ばれて、ビックリした。
指名依頼を貰ったのも初めてで、ビックリした。
「名高いあんた方の腕を見込んで、ぜひ頼みたいことがある」
って。
名高いとか、絶対お世辞だろと思ったけど、例えツッコんでも「はい、お世辞です」なんて正直に言われるハズもねぇ。
「おう、何だ? オレらにできることなら、任せろって!」
陽気な笑顔でドーンと請け負う天才の横で、「内容によるけどな」ってぼそっと口を挟むのがせいぜいだった。
わざわざオレらを指名しての依頼っつーのは、オアシス周辺のデザートワームの駆除らしい。
どうやら前のオアシスに大量に持ち込んで、名前を売ったのが知られたみてーだ。背景を聞くと成程納得で、ほんの少し警戒心が薄れる。
「あんたら2人で、かなりの量を討伐したらしいじゃないか。ぜひともうちのオアシスの周りでも、アイツらを狩って欲しい」
って。
タンパク源としても買い取ってはくれるらしーけど、そんな高値は出せねぇって話だ。とにかく最近、あのワームがどんどん増えて、サソリもラビットも食い尽くされて困ってるとか。
「美味いからいいが、それでもアレばかり食べる訳にもいかん」
「美味いって……」
やっぱ食うのか、とか思いながら「そーですよね」って相槌を打つ。サソリやラビットが食えねぇなら、当然ワームばっか食う事になるし、それはそれでオレがイヤだ。
「このまま放置すると、アイツらを餌にデザートシャークが増えちまう」
深刻そうに言われて、確かにそれは困るよな、と思う。
「デザートシャークが周辺をうろつくようになれば、このオアシスは孤立してしまうかも知れん。そうしたらどうなるか」
「下手したらオレらも、王都に戻れねぇかも……」
ぼそっとハマー(人間)に言われ、その場に緊張感が漂う。
「よし、そうならねぇよう、さっそく討伐に行こーぜ!」
「そーだな」
タオの声にうなずきつつ、オアシスの向こうの空に目を向ける。
こっからじゃ、門の外の様子は見えねぇ。けどこうしてる内にも、あの長ぇヤツが周辺をうようよしてんのかも知れなかった。
ハマー(人間)とその荷馬車は、勿論オアシスで待機だ。
「オレはここでのんびり商売続けてるよ~」
苦笑しながら、オレらにひらひら手を振って見せるハマー(人間)本人も、自分が戦力外だって自覚はあるらしい。
オアシスで弁当と飲料水を手に入れ、空っぽの荷車を借りて、オレらの馬を繋いで引かせる。
タンパク源としてはともかく、討伐報酬のためにも、デザートワームは丸ごと持って帰る以外に選択肢はなかった。
「なんか、イヤな予感すんな」
タオがニカニカ笑いを収め、神妙な顔でぼそっとそんなことを言い出したのは、オアシスを出てからのことだ。
「デカい巣でもできたか?」
「でも、デザートワームボスとか、聞いたこともねーよな?」
オレの言葉に、タオが「まーな」と肩を竦める。
オアシスで「任せろ」とか陽気に語ってたのとは明らかに違う態度。真剣みが伝わって来て、再度緊張に頬が引きつる。
オレも、多分タオも、考えてんのは同じくウッディコングの大量発生についてだ。
「ボスが出るなら、デザートライオンの方だと思ってたけどな」
「オレもそう思ってた」
油断なく周辺に視線を向けつつ、馬を操り荷車を引く。
「でも確かに、ここんとこデザートライオン見てねーな」
砂漠の町周辺には増えて、オアシス周辺にはいねぇ理由。それって……?
「他種のボスから逃げて、来た?」
オレがぼそっと呟いた直後、タオが「来るぞ!」って叫んで立ち上がった。慌てて手綱を引き、馬を停めた頃には、タオはもう双剣を抜いてて。
「くらえっ!」
気合の入った掛け声と共に飛び上がり、一度に何匹ものデザートワームを斬り捨てた。
勿論オレだって、ぼうっと見物してた訳じゃねぇ。
防具と剣に込めた、ピンキードラゴンの風の力を借りながら、軽やかに宙を飛んで剣を振るう。
着地して再び高く飛び上がるたび、バッと舞い散る細かい砂。
周辺にぼこぼこと穴が開き、それを目安に剣を振って、飛び出してくるワームを斬る。
肉質が軟いから手ごたえはあんまなくて、けど砂の上にはどんどんと肉のカタマリが溜まってって、見てるだけでやっぱウンザリした。
「あっちにもいんぞ!」
タオの警告に視線を向け、遠くにぼこぼこ穴を確認するや、ダッと砂の上を駆ける。
抜いたままの剣を右手に持ち、「やあっ!」と気合入れて飛び上がると、さっきまで足があったとこに、一斉にワームが湧いてちょっとビビった。
びゅんっと右手の剣を振り、次々にワームを倒してく。それが一旦治まったら、また今度は別の場所に沸き始めてて、さすがに多いなって顔がこわばる。
さっきオアシスを出たばっかだっつーのに、借りた荷車はもう一杯になってて、どうすんだ、と思った。
「一旦、オアシスに帰るか」
剣を鞘に納めながら、タオに声をかける。
こういうのは水を嫌うから、オアシス周辺には出ねぇんじゃなかったか? それともオレの知識が間違ってたか?
砂の上に散らばったワームの残骸を荷車に乗せてると――。
「アル、来るぞ」
そんなタオの警告と同時に、砂の波間にぽつんと、魚の背びれみてーなのが浮かび上がった。
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