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蛇塚のあったとこまで移動する間に、ハマー(人間)の荷馬車はワイルダーリザードでいっぱいになった。
「ああ……これだな」
黄色くマーキングされた石積みはバラバラに散らばってて、塚の形になってねぇ。ネズミがやったのか、トカゲの仕業なのか、よく分かんねーけど無残な感じだった。
石の散らばった辺りに、辛うじて宝箱を掘り出した穴の跡が見える。
「はあ……こういうの、何て言うんだっけ? 諸行無常?」
そんなことをぼやきながら、ハマー(人間)がしゃがみこみ、散らばった黄色い石を拾い集める。
毒ヘビ注意のマーカーでもあったそれらの石に、毒ヘビの出なくなった今、もう大した役割はねぇ。けど、ハマー(人間)にとっては、大事な墓でもあったみてーだ。
拾い集めた石をハマー(人間)は山になるよう積み上げて、そこに村で買った花を供えた。
「ご先祖様、ありがとう」
いや、ご先祖様じゃねーだろ……と思ったが、オレにだってそんなツッコミをしないだけのデリカシーはある。
オレはハマー(人間)に背を向けて、剣を抜き、再び現れたワイルダーリザードの群れに向かった。
サソリやワームとは違い、土に潜って襲う訳じゃねーけど、草むらをざかざか揺らして近寄って来る様子は結構不気味だ。
「このっ」
足元に突っ込んでくるリザードに、狙いをつけて剣を突き刺す。
デザートワームより肉質は硬ぇ。っつーか、ウッディコング類より硬ぇ。
だからって、タオの言う通りデザートシャークほど硬くはねーし、王都で強化した剣が通らねぇって訳じゃねーけど、斬ろうとするとどうしても力が入る。
びゅんびゅん双剣を振り回し、軽々と斬り払ってるタオが、ちょっと信じらんなかった。
これも腕の違いなんかな?
オレも結構強くなったと思うけど、まだまだだなって思い知る。
「皮、硬ぇなぁ」
「硬そうに見えねーけどな」
双剣を収めながらぼやくタオに、少々呆れつつリザードを拾う。
ハマー(人間)の荷馬車は、これで積載率120%ってトコだろうか。積めねぇ分はオレらの馬にもくくり付け、「そろそろ帰るか」と話し合う。
「ワイルダーリザードなんか、売れんのか?」
「あんま太ってなさそうじゃねぇ?」
リザードの腹回りや太ももを、タジマがむちむちと弄ぶ。
「家畜じゃねーんだから」
「でも大事だぜ」
ケラケラと笑いながら言い合ってると、「売れるよ~」とハマー(人間)が請け負った。
「皮だって売れるんだよ。何かの耐性みたいな特殊な効果は付かないけど、普通の革ヒモとか革ベルトとか、ブーツの材料にもなるよー」
革ベルト、って言われて、自分の身に着けてるズボンのベルトや、剣帯に軽く触れる。
そういやこれも革だけど、何の革でできてんのかよく知らねぇ。
値段とか使い勝手とかで選んでたけど、案外こういうのも何かの雑魚モンスターの皮でできてんのかも知んなかった。
「ただ……ちょーっと思ったより多いね……」
荷馬車の御者台に乗り込みつつ、ハマー(人間)が苦笑する。オレもタオも苦笑しかねぇ。
「まーな」
「大漁だよな」
まだ昼にもなってねーのに、こんなに大漁になるとは思わなかった。
売れるつーならいくらでも狩るけど、あんま狩り過ぎると値崩れしちまうのは、ウッディコングやデザートワームで経験済みだ。
「安く買えんのは嬉しーけど、買い取りが安くなんのは勘弁だよなー」
ぼやくタオに同意しながら、ハマー(馬)の背にひらりと乗る。
「次が来る前に、村まで戻ろーぜ」
オレがそう言うのと、ズン、と地響きがするのと、ほぼ同時のことだった。
ザザザーッと周りの草むらが一斉に揺れ、何やら小さな影が散り散りバラバラに足元を駆ける。
ハマー(馬)がビビっておののき、ヒヒーンといなないて後ろ足で立ち上がる。
「うわっ」
悲鳴を上げつつ手綱をぎゅっと握り締め、馬の背にしがみつくと、「アル!」ってタオが大声を出した。
「ハマー、先逃げろ!」
タオの指示に、ハマー(人間)が荷馬車を走らせ、村の方に逃げて行く。
タオがなんでそう言ったか、訊くまでもなく分かった。
蛇塚のある山のふもとから、更に上へと続く獣道。その道の周りの木々をバキバキと折り倒しながら、巨大なモンスターが現われた。
「ボスか?」
ハマー(馬)から降りて剣を構えつつ、ぼそりと訊く。
「知らねー」
同じくぼそりと答えながら、タオも双剣をすらりと抜いた。
巨大なモンスターはズシン、ズシンと足音を響かせながら、ゆったりこっちに向かって来る。
オレらのことなんか、気付いてもいねぇみてーな態度。気性が大人しーのか、それとも満腹なのか、よく分かんねー。単に人間の気配に鈍感なだけかも。
オレらに気付いてねーんなら、不意打ちも可能か?
息を詰め、足音を立てねぇよう、気配を殺しつつモンスターに近寄る。
デカい。そして、見る感じ硬そう。さっき散々倒したワイルダーリザードに、あんま似てねぇ。
トカゲ系には違いねぇけど、頭から背中にかけて岩みてーなウロコがゴツゴツ生えてて、別の種類なんじゃねーかと思った。
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