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89 ロックドラゴン編
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オレらがもたらしたドラゴンの話は、予想してたけど町中を沸かせた。
勿論、1番張り切ってたのはルナたちだ。
オアシスからなし崩しにオレらの町まで来ちまったけど、まさかこんなとこでドラゴンに出くわすとは思ってなかったらしい。
「よし! 討伐行くぞ!」
って、大声で気合入れて、すげー機嫌よさそうだった。
オレが剥がしたゴツゴツのウロコは、賞金稼ぎたちの間で証拠として回覧され、みんなの士気を見事に煽った。
「こりゃあロックドラゴンだな」
ベテランのオッサンらからそう言われ、素材を買い取ってくれる商人にも「そのようです」ってうなずかれる。
普段は地面に潜ってることが多くて、あんま遭遇する機会はねぇらしい。だからこそ素材は希少で、高値がつくだろうって言われた。
懸賞討伐の赤枠の張り紙も当然出されるだろうけど、幾らになるかは分かんねーらしい。
少なくともオレらの町だけじゃ出せる金額にはなりそうになくて、王都に連絡する必要があるみてーだ。
「王都の連中より早く行かねーと!」
「そーだな、横取りは許さねぇ!」
オアシスで取り残された剣士たちが、討伐準備を急ぎながら喚いてた。
王都の連中、っつーのは多分、ミーハを連れ去った魔法使い連中のことだろう。まあ、オレだってあれにはムカついたし、みんなが喚くのも無理はねぇ。
「よっしゃ、やるぞー!」
タオも一緒になって興奮し、ロックドラゴンに対抗する準備を進めてた。
野営の準備とか馬の準備、武器の手入れなんかは勿論だけど、今回1番のキモになったのは、剣の強化だ。
何しろ、オレの剣もタオの剣も、まったく歯が立たなかった。ロックドラゴンっていうだけあって、あの岩みてーなゴツゴツのウロコは強烈だ。
固いウロコには、固くてよく斬れる頑丈な剣を。そういう理由で、オレらの取って来た例のウロコはバラバラに砕かれ、みんなの剣を強化すんのに使われることになった。
正直、ちょっと勿体ねぇと思ったけど、アイツを確実に倒そうってんなら、初期投資は必要だ。
前のオレなら、そんな考えには至んなかったと思うけど、タオと組んで強いモンスターと戦ってく内に、武器や防具の大事さも分かって来た。
「ケチケチすんなよ。お前らにウロコ1枚分、余計に分け前やるからよ」
ニヤッと笑いながらルナにそう言われたのもデカい。
色々気に食わねぇトコはあるけど、ルナは何だかんだ言いつつ平等で公平だ。ミーハに懐かれてたのを見ても、悪いヤツじゃねぇんだろう。
「おー、忘れんなよ」
オレもニヤッと笑い返し、強化された剣を受け取る。
町の鍛冶屋が総出で徹夜して強化してくれた剣は、ロックドラゴンのウロコが打ち込まれ、うっすらと緑銀に光ってた。
ピンキードラゴンの竜玉と、ミーハが錬成して研磨してくれたサファイア、緑銀の刀身……。元はただの鉄剣だったっつーのに、今思えば随分変わっちまったなと思う。
タオの双剣も、そういや色々強化されてんだろうか?
ルナの大剣はどうなんだ?
「おら、行くぞー!」
黒光りする大剣をすらりと抜き、天を突き上げてルナが大声を上げる。
それに剣士らは「おー!」と答えて、それぞれが調達した馬に乗り、揃って高地へと駆け出した。
勿論、オレも一緒だ。ハマー(馬)に乗り込み、ルナやタオらと一緒に高地に向かう。
「オレは留守番してるよ」
ハマー(人間)はのんびり手を振って見送ってくれたけど、きっとアイツはアイツで、商品の仕入れや情報収集に忙しくするんだろう。
「ミーハによろしくな~」
緩く言われて、「そーだな」と後ろ手を振る。
希少だっつーロックドラゴンの討伐は、そろそろ王都に知らされた頃だろうか。
――依頼:討伐
内容:ロックドラゴンの討伐
賞金:金貨1000枚――
町の掲示板に貼られた、赤枠の貼り紙の内容を思い出す。
全員で分けるから、1人が1000枚とか貰える訳じゃねーけど、心躍る金額ではあった。
ミーハは来るだろうか?
王都からの依頼を受けて、凄腕の魔法使いが派遣されるなら……やっぱ、天才って言われてるヤツが選ばれるよな?
オアシスでの別れ際、オレの方に泣きそうに手を伸ばしてたのを思い出し、胸がじんと熱くなる。
あの手を取りてぇ。
再びアイツを取り戻してぇ。
ミーハのいなくなった空っぽの家を後にして、改めて思う。
例え記憶が戻んなくても、また最初からやり直せばいい。手を繋いで、抱き締めて、手元に置いていっぱいキスして――。
そしていつかまた、オレの横で笑うようになってくれりゃいい。
そのためにも、力が欲しい。
高地は、荒れ野や西山より数段上になる難所。ハイランダーベアやハイランダーウルフが時々出るが、銀の鉱石がたまに採れるんでも有名な場所だ。
山道に馬を走らせると、やがて緑が少なくなり、ゴツゴツした岩ばかりが目立つ場所に来る。
地面も砂利ばっかりになって、馬の足音も変わって来た。
「久々だな」
タオに言われ、「そーだな」とハマー(馬)の上から視線をぐるっと巡らせる。
周りの岩は、どっちかっつーと白っぽい。あの緑がかった茶色いドラゴンが、こんなとこいたら目立つだろう。
じゃあ、もうちょっと上の、洞窟や鉱山窟のある辺りにいんのかな?
「まさか、保護色とかの能力はねーよな?」
「んなモンスター聞いたこともねーぜ」
周りの剣士たちが軽口を交わしてっけど、その声は緊張をはらんでる。
タオと一緒に何度か来た高地だけど、何となくいつもと雰囲気が違ってて、ドラゴンの存在感がビンビンと分かった。
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