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ミーハの放った魔法を比較的弱そうな腹に受け、ロックドラゴンがゴロリと横に転がった。
巨体の回転に巻き込まれそうになり、足元にいた剣士たちが慌てて飛んで避難する。オレも慌ててジャンプしたけど、ドラゴンの横転を受け、岩場から破片が飛び散ったのが見えた。
これじゃ、ほとんど攻撃も一緒だ。
弱い腹を上に向けたのも一瞬で、またすぐに元の体勢に戻っちまう。
「やあっ」
「くらえっ」
気合と共に、剣士たちがドラゴンに次々に剣を突き刺す。オレは再び背中に飛び乗り、さっきと同じように強化した剣を突き立てた。
勿論、魔法使いたちも黙って見学するつもりはねぇようだ。
「ウォーターランス!」
「アイスアロー!」
ドラゴンの巨体に向けて、次々と魔法が当たり、ギャオォとドラゴンの鳴き声が響く。
「ロックソード!」
ミーハもさっきと同じ呪文を唱え、ドラゴンの真下から攻撃を加えた。
グギャアアア。
悲鳴を上げ、再び横に転がる巨体。飛び散る岩の破片の中、色の薄いドラゴンの腹が現われる。
勿論、それを見逃すオレらじゃねぇ。
一瞬だけ真上を向くだろう腹に向け、剣士たちが一斉に強化した剣を振り下ろす。
ルナとタオが、黒と赤のオーラをまといつつ、苛烈な一撃を与えてんのも見えた。素早くて鋭くて、やっぱスゲェ。
オレの攻撃も、そんな風に見えてんだろうか? タイミングを合わせてジャンプして、ビュッと剣を振り下ろし、少し柔らかいウロコを斬り裂く。
ロックドラゴンが元の体勢に戻ると同時に、ズシン……と重そうな地響きが広がった。
固そうだった岩盤に再び亀裂が入り、やっぱ重そうだなと思った。
わずかに生えてた細い木々が、根っこから折られて倒れてる。
砕かれた岩の破片がゴロゴロしてて、なまじ濡れてっから、足元が余計に危ねぇ。
あんま転がさねー方がいーんだろうか?
けど、そう思ってる隙にドラゴンがまた後ろ足で立ち上がり、ドガンと前足を振り下ろした。
「うわあっ」
悲鳴を上げ、背中に飛びついてた剣士が振り落とされて岩場に落ちる。
ビシビシと大小の破片が飛び散んのも、回転した時と同じで防ぎようがねぇ。
まだ火ィ吹いたりしねーだけマシなんだろうか? それともファイアードラゴンは、こんなに固くねーのかな?
太い尻尾をぶんっと振られ、「よっ」とジャンプして避ける。
ぐるんと180度回転する巨体。尻尾のあった場所に太い首が来んのが見えて、そのまま重力と共に首をめがけて剣を思い切り突き立てる。
固いウロコの破片と共に、ドラゴンの血が飛び散ったのが見えた。
「首だ!」
着地しながら思わず叫ぶと、「よっしゃーっ」ってタオが叫ぶのが聞こえた。
目の前を、赤い閃光が走る。
黒の烈風が舞う。
誰がどんだけ攻撃を加えたかも、よく見えねぇ。オレもひたすら剣を振り、弱そうなトコをめがけて攻撃を加える。
バサッ。そんな音と共に、腹と背中の間から巨大な翼が現われたけど、勿論逃がすなんて許すハズもねぇ。
「叩き斬れ!」
ルナの大声を聞くまでもなく、高くジャンプして上から翼をばっさりと斬り裂く。
他の剣士たちも次々そこに攻撃し、コウモリみてーな薄い翼はあっという間にズタズタになった。
「アイスランス! アイスランス!」
ミーハの声と共に氷の槍が降り、ズタズタの翼を岩場に縫い付ける。
「もっかい腹を!」
オレの指示に従い、ミーハが「ロックソード!」って叫ぶのが聞こえた。翼を縫い付けられたドラゴンの腹に、岩の棘が突き刺さる。
ギャアアアア、グギャアアア。
悲鳴を上げるロックドラゴン。威圧を放ってくるけど、高揚してるオレらには効かねぇ。
「おりゃあっ」
ルナが大声を上げ、ドラゴンの首をめがけて大剣を振るう。
ガシュッ、と鈍い音と共に、ルナのデカい剣がドラゴンの首に深くめり込む。
タオも同時に下から双剣を突き上げて、ドラゴンのアゴを串刺しにした。
ピタッと動きを止めるロックドラゴン。
ふつりと鎮まる威圧。
やったか?
誰もがきっと、そう思った。そう思って油断した。
直後、前触れもなくドラゴンの太い尻尾が振り回されて、近くにいた剣士たちをなぎ倒した。
飛び散る岩の破片、倒れ込む剣士。
ミーハの「氷槍」に縫い付けられてたボロボロの翼が、「氷槍」を打ち砕いてぶわりと広がる。
「うわっ」
「ぎゃあっ」
複数の悲鳴の中に、「うひっ」って高い悲鳴が混じったのが聞こえた。
「ミーハ!?」
ギョッとして振り向くと、翼の風に煽られて、小柄な魔法使いが吹き止され、転がるのが見えた。
転がった先は、ちょうどチョロチョロと水が流れる平らな場所で、ミーハは飛ばされた衝撃のまま、背中から落ちてつるんと滑った。
ゴツゴツの岩に打ち付けられるよりはマシだけど、滑った場所が悪ぃ。すぐ向こうは岩場の端で、下に落ちそうだと思った。
「ミーハ!」
大声で叫びながら、びゅっと駆けて滑ってく体を引き留める。
反動で、つるんと滑る足元。
ミーハは辛うじて止まったけど、オレの方は止まりようがなくて――掴まれる場所も、何もなかった。
「アル君っ!」
ミーハの悲鳴を聞きながら、濡れた岩盤に剣を突き立てる。強化されたハズの剣だけど、濡れた固い岩に食い込む程じゃねぇみてーだ。
剣先はわずかな反動と共に弾かれて、そのままつるりと崖下に落ちるのが分かった。
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