アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
42
-
目が覚めると、ベッドの上だった。
真っ白な天井、真っ白な壁。知らねぇ部屋だ。宿屋でも自分ちでもねぇ。
……どこだ?
起き上ろうとヒジを突こうとした瞬間、激痛が走って悲鳴が漏れる。
「うっ……!」
ドサッとベッドに倒れ込んでから、痛かった左肩に目を向ける。と、仰々しいくらいに包帯が巻かれててドキッとした。
添え木もしてある。骨折したんか? いつ?
デザートライオンはどうなった?
「ミーハ?」
迷いなく恋人の名前を呼ぶ。オレがこんなケガしたんなら、きっと泣きじゃくってんだろうと思って。
……側にいると信じて。
「ミーハ? いねーのか?」
もう一度、声を張り上げて呼ぶと――カチャッと部屋のドアが開いた。
けど、部屋に入って来たのはミーハじゃなかった。
「よぉ、目ェ覚めたか? 心配したぜー」
普段のハイテンションを抑え、神妙な声でそう言ったのは、タオだった。
タオはそのままスタスタとベッドに近付いて、オレの右肩にぽんと軽く手を当てた。そんで言ったんだ。
「お前、もう3日間眠りっぱなしだったんだぜ」
って。
「マジか!?」
3日――、そんなに?
「ミーハは?」
「あー、ミーハに感謝しろよ~? あいつが治癒魔法連発してくれたお陰で、その程度ですんだんだかんな」
「そうか……」
治癒魔法連発か。泣きながら必死に呪文を唱えてる様子が目に浮かぶ。
じゃあ今頃、疲れて眠ってんのかな?
メシ時には会えるんだろうか?
ここは砂漠の街にある診療所らしい。
道理で清潔そうな部屋だと思った。何もかも白いし。
幸いにも、オレは今まで大ケガなんかしたことなかったから知らなかった。診療所って、料金高いって印象があったから、使ったことなかった。
治療代とか入院費は――デザートライオンの懸賞金で出せるかな?
討伐は成功でいーんだよな?
タオに手を借りてゆっくりと起き上り、オレは改めて全身に目を走らせた。
右の手のひらは、包帯こそ軽く巻かれてっけど痛みはまるで無ぇ。炎で熱された剣を握って、あんな焦げる臭いさせてたっつーのに。まったく、ミーハの『治癒』はスゲーよな。
問題は左だけど……。
「痛っ……」
軽く動かしただけでズキンと痛みが骨にひびいて、思わずうめき声が出る。
はー、と深呼吸を繰り返してると、タオが話しかけて来た。
「それ、ケガした時のこと、覚えてるか?」
「あー、デザートライオンだろ? 前足にやられた」
勿論覚えてた。こっち側に受けた、スゲー衝撃。意識を失う直前に見た、ミーハの不安げな様子。オレを呼ぶ金切り声。
タオに貰ったアーマーがあってコレだもんな。
なかったら……もっとヒドかったかも知んねぇ。ミーハにもやっぱ、スゲー心配させたよな。
「なあ、ミーハここへ呼んでくんねぇ?」
オレがそう頼むと、タオは――。
「無理だ」
たった一言口にして、神妙な顔で首を振った。
「はあ? なんで!?」
問い詰めようとして、イヤな予感に鳥肌が立つ。
まさか、ミーハもケガを? 歩けねェくらいのケガか? 意識は? ……生きてんだよな?
「じゃあ、オレが行く。ミーハはどこだ?」
声を荒げながらベッドから降りようとすると、また体に激痛が走った。
「くっ!」
けど、こんな痛みくれーじゃ死なねーし。どうってことねぇ。我慢できる。それより、ミーハが無事じゃねーと生きていけねぇ。
ミーハ!
「無茶すんなって!」
タオが大声で言って、オレの両肩を押さえつけた。
押さえられた左肩から、ズキンと強烈な痛みが響いて、ドサッとベッドに倒れ込む。
「お前が無茶して起き上ったって、ミーハには会えねーよ! 分かれ!」
ミーハに会えねぇ。
タオのセリフにドキッとする。意味分かんねぇ。会えねーってなんだ?
「なんでだよ……?」
震える声で訊いたオレに、タオは言った。
「シーン家のじーさんが、迎えに来て……」
じーさんが迎えに来て。
ミーハを連れて、首都に帰っちまった、って。
「……はっ、なんだ、それ? 意味分かんねー」
タチの悪ぃ冗談かと思ったけど、残念ながらそうじゃねーらしい。ホントのコトらしい。
マジ、意味分かんねぇ。
ミーハが無抵抗だったとか。自分から「帰ります」って言ったとか。なんだ、それ?
つーか、なんで?
なんでミーハは、オレに何も言わねーで行っちまったんだ?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 102