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ルナの家は、これもまた分かりやすかった。
いや、一応、本人から大体の場所を聞いてたっつーのもあるんだけどさ。
「すんません、この辺に『黒い烈風』って呼ばれてる、ルナっつー剣士の家、ありませんか?」
道行く人に適当に訊くと、3人目で案内して貰えた。
「家の前に黒い大きな石があるから、すぐ分かるよ」
って。さすが有名人だよな。
感心しながら間近まで行くと、目印の効果もあって、ホントすぐに分かった。
黒い大きな石っつーから、岩みて―なのを想像してたんだけど、そのデカさは予想をはるかに超えてて笑った。
デカいにも程がある。つーか。
……見覚えがある、つーか。
「これ……」
絶句したオレの横で、タオがゲラゲラと笑った。
「何やってんだ、アイツ、スゲーッ!」
確かにスゲェ。そんで、確かにすぐ分かる。
ルナんちと思われる家の入口の真ん前、扉の横に、でーんと立ってんのは、オレらの背丈よりもっと大きな黒い石。
さすがに入り口をふさいではなかったけど、その圧迫感と重量感には、激しく見覚えがあった。
残念ながら黒曜石じゃなくて、他の種類の石を黒く塗ってるだけみてーだけど、それを差し引いたって、忘れやしねぇ、いつか見た光景にそっくりだ。
初めて高地へ行ったとき、タオとミーハが見つけて『転送』させた大岩。そんで、その直後――ハイランダーウルフと一緒に、オレも家へと飛ばされた。
あん時モンスターから助けてくれた黒い鎧の剣士・ルナは、それ見て「センスいーな」とか誉めてたっけ。
「思い出すよなぁ、あん時は笑い事じゃなかったけど。マジ、色々あったよな」
「ああ……」
タオのセリフに、苦くうなずく。
ハイランダーウルフさえ、まともに倒せなかったオレ。そして同じく、的確に魔法を使えなかったミーハ。
タオとルナがいてくれなかったら、あの後どうなってたか分かんねぇ。
けど、いつまでもあん時のままじゃねーし。もし同じ状況下に置かれたって、ビビらずに一撃で倒せるくらいの自信は、もうついていた。
感傷を振り払うように、石の横の扉をノックする。
「よお久し振り」と、あの精悍な顔がニヤッと笑ううのを想像する。
けど――残念ながら、しばらく待ってもルナは出て来なかった。留守か。
「まあ仕方ねーな、いきなり来ちまったし。その辺ぶらついてから出直すか」
タオがそう言って、オレの肩をぽんと叩いた。
ホント言うと、行き違いにならねーように、家の前で待っていたかった。けど、それすると目立つしな。仕方なく、周辺をぶらぶら歩くことにする。
そしたらさすがっつーか、仕事の仲介所がすぐ近所にあって感心した。
そういや「また荒稼ぎし始めた」とか言われてたっけ? ミーハの捜索が終わったんで、ようやく仕事を再開したってことか?
タオは、看板が見えた時点でぴゅーっと走って見に行っちまった。オレはそれ程浮かれた気分にはなれねーで、半分呆れながらヤツの背中を追い掛ける。
看板の前はスゲー人だかりだった。どの町もそんな感じだけど、ここは特にスゲェ。看板もデケェ。さすが首都。
タオは人混みを掻き分けて前に行っちまって、もうどこにいるんだか分かんねぇ。
まあ、でも、気持ちは分かるけどな。デカい大人たちの頭で、看板なんかほとんど見えねーけど、首都でしか見かけねーような依頼とかも多いんだろう。
例えば、金持ちや有力者の護衛とか?
荷馬車の護衛とか?
懸賞討伐も、ランクが違ったりすんのかな?
そう、例えば――ルナとミーハが請け負ったっつー、ドラゴンの討伐、とか?
ちょっと離れた場所から人だかりを眺めてたら、大声で名前を呼ばれた。
「アル! アル! ちょっと来いよ!」
姿は見えねーけど、勿論、声の主はタオだ。
「はあ? どこだよ!?」
大声で返事するけど、「こっちったらこっちだろ!」とか訳の分かんねーこと言われる。相変わらず、フリーダムなヤツ。
どうせ依頼看板の前だろうと予想して、イヤだけど人垣を掻き分けて前に行く。
「すみません、ちょっとすみません」
って。ギュウギュウに押されたり、押し返されたりしながら、ぐいぐいと苦労して前に行くと――タオは思った通り、看板のど真ん中真ん前にいた。
そして当然、指差す先には、白地に赤枠の懸賞討伐。
――依頼:捕獲
内容:ピンキードラゴンの狩猟または捕獲……
呆れると同時に、ちょっとビビった。
まさか、行きてーとか行こうぜとか言わねーよな? ミーハもいねーのに無理だ。っつーか、いても無理だ。
名前こそ可愛いし、世界最小のドラゴンだとか言われてっけど、デザートライオンよりはデケェし強いし、凶暴なんだぜ?
「なあ、アル……」
タオが口を開いたけど、それ以上は喋らねー内に、オレはキッパリと首を振った。
「ダメだ」
「まだ何も言ってねーじゃん!?」
タオはいつもの調子で喚いたけど――こればっかりは認める訳にいかなかった。
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