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「理事長と面談かぁ。緊張してきた……」
予定通り、カイルを連れ立って理事長室へと向かっている。これからどんな目に遭うか露ほどもしらないこの男は、面談での質問内容について思いを馳せていた。
「大丈夫さ。普段の君の優秀さは理事長の耳にも届いている。……さて、着いたよ」
「失礼しまーす……うっ」
扉を開けたところでカイルが顔をしかめた。
「なんか、甘い匂いが」
「お香を焚いてるんだ。リラックスできるようにとね」
とは言っておいたが、要は媚薬である。淫魔のロキに手配してもらった罠の一つだ。この真面目な勇者を淫乱に作り変えるための第一段階。
「お香、ですか」
「お気に召さなかったかな」
「いえ、とんでもない」
カイルは人生で一度も吸ったことのないであろう匂いに内心辟易しているようだが、もちろんそんなことで退室してしまう男ではない。居心地悪そうにしながらも俺の後に続く。そんなカイルに追い討ちをかけるかのように媚薬の煙は全身に巻きついていった。彼の表情もみるみる恍惚といった様子に変わっていく。感覚が鈍麻する効果もあるのか、俺に背中を支えられていることにもきづいてないようだ。
「ソファに腰掛けて待っていなさい。あとこれ、紅茶もどうぞ」
「あ、お気になさらず」
俺はヴィンセント様を呼びに行くと告げ、部屋を出る振りをしてカイルの様子を窺った。
彼はカップを受け取ったが、遠慮してかどうも飲む気配がない。紅茶に混ぜた睡眠薬を飲んでくれないと手を出せないだろうが。それどころかソファから立ち上がり、調度品を興味深そうに眺め始めた。
作戦変更。もはや多少強引にでも自由を奪うしかない。俺は変身を解き吸血鬼の姿に戻ると、懐から麻酔薬を染み込ませたハンカチを取り出した。それを持ってカイルの前に現れると、彼は即座に戦闘態勢になる。
「ッ!? 誰だお前!!」
吸血鬼然とした黒ずくめにすぐさま敵に相当する存在だと勘づいたようだが、人間体とは似ても似つかない俺の姿に、まさか今の今まで一緒にいた男と同一人物であることまでは看破できていない。
「しばらく眠ってもらう」
「させるかっ」
カイルの威嚇を無視し、なおも接近を図る。帯刀していなかった彼から容赦ない右フックがお見舞いされた。媚薬で体が不自由になっているのを感じさせない威力だ。
だがーー。
「くっ!」
未熟だ。命中すればそこそこの威力になるであろう拳も受け流してしまえばダメージはないし、攻撃をさばかれた後の対処も甘い。よって格闘が専門ではない俺にですら簡単に拘束されてしまう。他の新人よりは腕が立つのだろうが、俺にしてみれば所詮は青二才。
机に突っ伏すように押し倒し、
「眠れ」
「何す……ううっ!」
布を顔に押し当てると派手に暴れられたが、耳元で「大人しくしろ」と囁けば軽い暗示がかかり、抵抗が一気に弱まった。それからカイルの両手が垂れ下がるのも時間の問題だった。ロキが淫魔として使用する薬品は、普通の人間にはどれも強力なのだから当然のこと。カイルはよくもったほうだが、咄嗟のことで反応が遅れ息を止められなかったようだ。ハンカチ越しに小刻みに呼吸をしているのが分かる。
「う……ん」
最後まで振り続けた首の動きが静止し、瞼が閉じるのを待つ。それから顔にお香を近づけて一気に吸引させた。
「……ッ」
かなりきつめの甘さに顔をしかめるが、麻酔薬のせいで抵抗もできまい。ぐったりしたカイルの体が熱を持ってきたあたりで転移魔法を発動させ、俺の自室に連れ込む。呆気ないな。
儀式用の寝具に横たえる前に装備を全て外した。制服類を全て剥がれマント一枚纏わぬ姿でシーツに沈んだ彼は、勇者とは無縁の力無き少年に見えた。
何より、肌が綺麗だった。複数の傷跡が見られ戦闘経験が多いことが窺えるが、たとえ傷物でもいいものはいい。それでいて適度に引き締まった体に無駄な肉など一切なく、鍛え抜かれた筋肉の至る所に間接照明による影の凹凸が生まれていた。そしてカイルが規則正しい寝息を漏らすたび、上体も緩やかに隆起と収縮を繰り返している。
俺も首元のジャボを少々緩め、ベッドへ移る。カイルに覆い被さったとき、俺としたことが、若干気分が高揚していることを自覚した。これは決して目の前の男に欲情してでのことではない。仕留めた獲物に手を出せるという一種の支配欲からくる昂りだった。
最初の段階として、まず対象の性的弱点を知るところから始めるのが基本だ。
まず無難な場所として乳首はどうか。触り方、力の強弱を変えながら試してみたが、反応は皆無だった。
次に臀部。体を横向きにし揉みしだくも、反応はないに等しい。試しに指先で軽く撫でると、これが意外にも効果テキメンで、カイルの下半身が少し震えたのを俺は見逃さなかった。
この男はくすぐりに耐性がないかもしれない。また媚薬がしっかり効いていることも確認できた。詳しく知るためにもカイルに気付け薬を吸引させ、半覚醒の状態を保つ。
脇、脇腹、足の裏、いずれも何らかの反応を示し、背中にいたっては苦しそうに身をよじらせた。
顔はどうだろう。口に関しては後々ヴィンセント様が面倒くさそうだから未開発にするとして、まずは耳。
結果として両耳とも感度抜群であった。息を吐くだけで体がびくびくとし、噛んだり舐めたりしたときには初めて声を発していた。
どうやら陥落させるのもイージーモードのようである。
特に目立った反応を見せた背中と耳を、舌で何度も蹂躙する。意識があったならもうやめてくれと懇願されるくらい入念に集中的に。媚薬の効果も手伝い、一連の試運転を終えた時点ですでにカイルのペニスは張り詰めていた。黒い手袋越しに先端を弄ると、すぐに先走りが滲む。
アナルを指先で刺激してみるが硬いままである。最終的には前でも後ろでもよがってもらわないと困るのだが、果たして拡張する時間はあるのか。
俺もマントを脱ぎ捨てる。
まずは前から。へそのすぐ下の位置に淫紋を刻むのだ。淫魔なら誰でも使える魔術であり、ヒトを性奴隷に仕立てるときに重宝される。吐精すればするほど肉体に深く沈着するのが大まかな仕組みだ。この紋章が一旦定着してしまえば射精管理が朝飯前になる、なかなかにエグいものなのだ。
右手に魔力を込めると、鋭利なハートマークがピンクの光を帯びて浮かび上がった。それをカイルの下腹部に向け……。
あ、あれ? 紋が消えてしまった。
変だな。もう一度だ。……また消えてしまった。
おかしい。次こそは、と力を溜めたが、今度は紋章すら発生させられなかった。
一体どうしたというのだ。
あ。
その疑問はすぐに晴れた。
事がスムーズに運んでいることに気を良くした俺はノリノリで快楽責めを進めていたが……。
もっと周りに気を配るべきだった。殺気が至近距離まで迫っている。
振り返るとそこにはーー
「どうした。手が止まってるぞ」
「……ヴィンセント様。一体いつから」
「お前がカイルの制服をてきぱき脱がしているときかな。まあそんなことより、ブラッドリー君」
にっこり。ヴィンセント様は満面の笑みを崩さずに言う。
あ、これやべえ。怒りのボルテージが限界値に達している。
「俺がいないからって部屋に連れ込んで、全裸にして、果てには淫紋使用未遂とはーー随分おいたが過ぎるじゃねえか」
「あー、そっすね」
俺は観念してカイルから離れる。降参の意として両手を挙げるが早いか、次の瞬間には魔王の腕の中に眠れる勇者が収まっていた。そのまま漆黒のマントで勇者を一瞬覆っただけで、脱ぎ散らかされた衣類が元通り着用した状態になっていた。
魔王は言った。
「俺の勇者に手を出すな。次は無いと思え」
魔王は魔王なんだな。ぼんやりとそんなことを考えていた。
この男、本気だ。
しかしですね、ヴィンセント様。
ここはRPGの世界観なんですよ。場違いも甚だしい。
あなたの今の台詞はラブストーリーでこそ言うべきだ。
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