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「……へぇ、それでカイルを手篭めにしようとねぇ」
「すみませんでした」
「どう落とし前つけてもらおうか」
そう、凄まれましてもね。意識のない勇者をぎゅっと抱いたままのヴィンセント様は、見ようによっては大きなぬいぐるみを抱える幼女と重なってしまうのだ。俺が「そろそろ起きるので離したほうがいいです」と言うも「やだ。もうちょっとこのまま」と駄々をこねる始末。ブレねえな。
「落とし前とは言ったが、この件に関しては原因は俺なんだよな。俺が偏った嗜好を持っているがために、お前らなりに動いたんだもんな。それはすまないと思ってる。まあ、まさかここまで手が早い輩が現れるとは思いもしなかったが」
「いやいや、一番手が早いのはあんただろうが! 出会った瞬間に勇者にありとあらゆる防御魔法を施してるなんて、夢にも思いませんでした。どうりで淫紋の効果が出ないわけですよ!」
こうなってはカイルの息の根を止めるなど不可能に近い。立ち位置が敵に相当する男に目をつけられたことだけ目をつむれば、こんなに心強いセコムはいない。手練れの霊能力者の守護霊を引き連れた状態で心霊スポットに出向くようなもの。本気になれば蘇生魔法も簡単に使えるし、どんな戦闘も怖いものなし。無敵。そしてヴィンセント様の懐で呑気に寝息を立てている目の前の男は、自分が今世界で一番強い男に守られていることを何も知らないのだ。
「ふと思うんだよ。勇者は弱き者を助けるヒーローだ。じゃあそんな勇者は、誰が守ってくれるんだろうって。……魔王しか、いないよな」
寝言は勇者のように寝てから言ってくれ。
ヴィンセント様はカイルを横抱きにする。もはやぬいぐるみというよりも、お姫様を抱いている感覚なのかもしれない。このまま二人きりで放置しておけば「目覚めさせるためだから」などと理由をこじつけて唇を奪いそうなので目離し厳禁だ。
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