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「何ですこれ……」ブラッドリーが今日一のため息をついた。
彼が目にしたのは、俺の寝室の壁が一面モニターになっており、カイルの歩く姿が引きで映っている珍百景だ。
「驚いただろう」
「驚いたというか、呆れたというか」
「引きの画だけじゃない。ボタン一つで俯瞰、顔のアップ、バストアップ、カイル目線など様々な角度から観察できる仕様だ。カイルがいろんな表情を見せるたび……」
パシャ。
「ちゃんと撮ってくれる手筈になっている」
「撮影はどうやって」
「暗殺組織のジャファルという男に依頼し、カイルを尾行してもらっている。そこに大金を投じて撮影のオプションを付けてもらった」
「 」
俺の手際の良さに惚れたのか、ブラッドリーは二の句を告げなくなっている。そんな状態の彼を知ってか知らずか、カメラ越しにジャファルがピースサインを寄越してきた。あっちはあっちなりに楽しんでいるようで何よりだ。
「アサシンを何だと思って……よく引き受けてくれましたねそいつら」
「断るならラグナロク起こすって言ったら二つ返事だったな」
「いくら魔王でも職権乱用はいけないと思います」
まだレベルが低いカイルは、まさか出発早々つけられているなんて夢にも思っていないだろう。表情が無防備だ。あ、ほら、また笑った。
「……でも、果たしてこのまま進めるでしょうか。早くも詰む予感がします」
「なぜ」
「お忘れですか。カレッジ周辺の平原は平均レベル30相当ですよ。レベル1の彼は返り討ち確実です」
なんだ、そんなことか。
「心配ご無用。あらかじめこの辺一帯の生態系を変えておいた」
「はぁ? 変え……はぁ!?」
「次の集落に着くまで種類はスライム一匹のみで、レベル上限も5。さらに万一に備えて、草むらの至る所に薬草を落としていくようジャファルに依頼済みだ」
「か、か、か……」
ブラッドリーの言葉が詰まる。おおかた俺の手腕がかっこよく見えたのだろう。
「過保護……別に勇者の旅はPG-12指定なわけではないですからね? そこんとこお分かりで?」
「愚問だな。それくらいわきまえている。俺の目的は」
こちらは直接の手出しはしないが、それ以外のサポートは全力で行いたいだけなのだ。
「ヴィンセント様。まさかとは思いますが、カイルの旅を今後定期的に観察するわけではないですよね」
ブラッドリーが上目遣いで尋ねてくる。
「ははは! ブラッドリー、さすがにそれは冗談きついぜ!」
「ですよね」
「終日見るに決まってんだろ」
「えっ」
「と、いうわけで!」
「?」
「『ファイナルLOVEファンタジー〜勇者カイルが魔王ヴィンセントを打ち倒すまで〜』の実況プレイを行っていく!」
「どういうわけですか! てか誰に向かって言ってるんです」
「実況解説は我輩、魔王ヴィンセント様と……ほら、お前も自己紹介」
「嫌ですよ。何が悲しくて勇者の私生活覗かないといけないんですかっ」
「な・の・れ」
俺がラグナロクポーズをとると、さすがのブラッドリーも渋々応じた。
「はぁ……魔王様の右腕の超天才美形吸血鬼ブラッドリーがお送りします」
「お前もノリノリじゃねえか」
お前の肩書は隠れナルシスト石頭吸血鬼でいい。
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