アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第2章 Frustrating Feeling8
-
あの頃の俺は、親父から劇場の運営を任されたばかりで、それまで学生生活をここぞとばかりにエンジョイしていた俺は、右も左も分からないままに与えられた支配人と言う座に、半ば辟易としていた。
そんな時だった、智樹と出会ったのは……
いや、“出会った”ってのとは違うな、“拾った”の方が、もしかしたら正しいのか……
智樹は今日と同じ、激しく降る雨の中傘も差さず、ただ虚ろな目で空を見上げていて、俺はそれを少し離れた場所で車窓から眺めていた。
けどいつまで経っても智樹がそこから動く気配はなくて、
声をかけようか……
それとも傘を貸してやるべきか……
一人考えあぐねていると、不意に智樹の姿が視界から消えた。
「えっ……、マジかよ……」
俺は車を飛び出すと、ジャケットで雨を避けながら、道端に倒れ込んでいる智樹に駆け寄った。
「おい!」
既にずぶ濡れの智樹を抱き上げ、冷たくなった頬を手で叩いた。
でも智からの反応はなくて……
「嘘だろ……、死んでんのか……?」
不安になって口元に頬を寄せると、微かに息をしているのが分かった。
「ちっ……、なんなんだよ、ったく!」
一人悪態をつきながらも、ずぶ濡れの智樹を放って置くことも俺の性格上出来ず……
俺は智樹を背中におぶると、車の後部座席へと運んだ。
「一晩だけだかんな、いいな?」
意識が戻ったらとっとと帰って貰えばいい。
今の俺には、自分のことだけで手一杯で、他人を構ってる余裕なんてないんだから。
まさかそれか三日三晩も高熱で魘されることになるとは、思ってもなかったけど……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 389