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第5章 Time 7
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智樹にダンスの経験があるのは分かった。
それもかなり高いスキルとテクニックを持っていることも。
智樹の本気のダンスを見てみたい。
出来ることなら、ステージに立たせてみたい。
俺は次第にそう思うようになっていた。
ただそれを切り出すチャンスが中々見つけられずにいたそんな時、たまたまメインで踊る筈だったダンサーが、急な体調不良の為にステージに立てないと、俺のスマホに連絡が入った。
俺は迷った。
確証はあるものの、智樹が素直にYesと言うだろうか……、と。
しかも用意されたステージは、必ずしもダンスをお披露目する場ではなく……、なんなら客の大半が野郎の裸を見に来んだから、ステージに立つだけでも、相当な勇気と、それから覚悟が必要になって来る。
果たして智がそれを受け入れるかどうか……
でも迷っている時間なんて、そう多くある筈もなく……
刻々と開演時間が迫る中、
「悪ぃ、ちょっと頼まれてくんねぇか?」
俺は智樹の手を引いた。
「えっ、ちょっと何っ……」
理由を告げることもなく、智樹を車の助手席に座らせると、無言のまま車を劇場へと向かって走らせた。
「なあ、何なんだよ、いきなり……」
シートベルトを肩に掛けながら、智樹が戸惑いの声を上げる。
「実は、な……」
いや待てよ?
智樹のことだ、いきなり大衆の前で素っ裸になって踊れ、って言ったところで嫌がるに決まってる。
それこそ車からだって飛び降りかねない。
ここは黙っとく方が得策か。
「やっぱ着いてから話すわ」
「んだよそれ……、意味分かんねぇ……」
俺は不貞腐れた顔で俺を睨む智樹の手を握った。
智樹もそれを拒むことはせず、寧ろそうしていることが、智樹にとっての精神安定剤のようにもなっているようにも見えた。
……が、その効果も劇場に着いた途端、まるで雲を蹴散らすかのように消えて失せた。
ま、当然か……
踊りたくねぇ奴に、いきなり素っ裸になって踊れ、って言われたって、そう簡単に受け入れられるわけがない。
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