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第5章 Time 11
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「でな、その祭りに雅也をだな……」
智樹が用意してくれた朝飯をパク付きながら、昨日雅也にした話を智樹にもした。
当然、智樹のことだから「俺は行かない」って言うだろうと予想をしながら。
ところが、だ……
「へぇ、面白そうじゃん。それにあの二人なら、結構お似合いだしな」
智樹の口から出たのは、全く予想もしていなかった言葉で……
「だ、だよな……、お似合いだよな」
俺の方が戸惑ってしまう。
「待ち合わせは神社でいいのか? 多分俺と和人の方が早く着くと思うけど……」
「そう……だな。そうして貰えるか?」
俺と雅也は立場上、仕事をほっぽり出して祭りに繰り出す……って訳にはいかないのを、智樹も良く理解してくれている。
「おっ、そろそろ出ないとマズイな」
俺は残りのパンを口の中に押し込むと、少々甘めのカフェラテで一気に流し込んだ。
滅多に劇場に顔を出すことのない社長、つまり親父が月に一度だけわざわざ劇場に足を運び、経営状態をチェックする日がある。
それが今日だ。
「俺先出るけど、お前一人で大丈夫か?」
「ばか、ガキじゃあるまいし、一人で行けるっつーの」
それもそうか。
でもな、智樹?
分かってはいても、どうしても心配になるんだよ、お前のことが……
一人にしたら、何処かに行ってしまうんじゃないか、ってな……
「あ、おいネクタイ」
ソファーの上に置いたPC入のブリーフケースを下げた俺を、智樹の手が引き止める。
そして俺の首元に手を伸ばすと、緩んだネクタイをキュッと絞めあげた。
ネクタイすら自分で絞められねぇくせにな(笑)
「よし、これでいい。行ってこい」
俺は智樹の顎を持ち上げると、智樹が瞼を閉じるのを待って、その唇に自分のそれを重ねた。
「じゃあ、行ってくる」
穏やかな時間……
この時間がいつまでも続けばいいと、そう思っていた。
いや、違うな……
俺は願っていたんだ……
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