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第6章 Accident 4
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「あれ……は……」
まさか……、だってそんな筈は……
俺は和人のことをすっかり忘れて、そのキャップを追いかけた。
良く似てるだけで、見間違い……なのかもしれない。
それでも俺はそのキャップの後ろ姿を追わずにはいられなかった。
もう二度と会えない、って分かってるのに……
もうこの世にいない、って分かってるのに……
でもあの後ろ姿と、擦れ違った時に一瞬鼻先を掠めた、決して甘くはない、でもエキゾチックでセクシーな匂いは、今でも頭の片隅に確かに残っているアイツの記憶で……
「潤……、潤……一……」
いつしか俺の唇はアイツの名前を呼び、頬を汗とは別の何かが濡らした。
「どうして……」
次第に霞んで行く視界を、真新しい浴衣の袖で拭い、履き慣れない下駄に痛みを感じながら、俺は幻かもしれない潤一の後ろ姿を追った。
そしてとうとう神社の境内に差し掛かろうとした時、袂に入れていたスマホが震えた。
「あっ……」
ほんの一瞬…だった。
煩く鳴り響くスマホに気を取られ、足を止めたほんの一瞬……だった。
顔を上げた時には、そこに潤の姿はなく……、生温い風に揺れる葉音だけが、まるで俺のざわつく胸中を体現するかのように、カサカサと音を立てた。
「夢、だった……のか?」
だってアイツはもう…
それに仮に潤一が生きてたとして……、そんなこと万に一つもないことだけど、偶然にでもこんなトコで会う筈がない。
逃げてきたんだから……
潤一との想い出が残るあの町から……、全ての過去から俺は逃げ出して来たのに、どうして今更?
幻だったとしても、どうかしてる……
「そう言えば……」
俺は思い出したように、すっかり静かになってしまったスマホを袂から取り出した。
画面には、翔真からの着信を知らせる通知だけが光っていたが、俺は電話をかけ直すことはしないまま、スマホを再び袂へ落とした。
途中で逸れてしまった和人のことが気になっていた。
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