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第8章 To embrace 14
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「で、俺にどうしろと?」
暫く考えた後、俺が出した答えは、智樹を突き放すことだった。
身体に受けた傷なら、時が経てば自然と癒えていくけど、心に受けた傷だけは、どれだけ時間が経ったってそう簡単には消えやしない。
そんなことくらい、俺にだって分かってる。
でも俺は、智樹自身に乗り越えて欲しかったんだ。
ダンサーとしての智樹を失いたくなかったから……
「抱けと言うなら抱いてやる」
そうすることで、智樹が心に受けた傷が少しでも癒えるのであれば、俺はいくらだって智樹の望むようにしてやる。
でもそうでないのなら……、ただ性欲を満たすためだけのセックスなら、俺はしたくない。
「どうする?」
胸に埋めたままの顔を頬を包んで上向かせ、ゆれる瞳を真っ直ぐに見下ろしてやると、智樹は何度か長い睫を瞬かせ、それからゆっくりと瞼を閉じた。
「欲しい……。翔真に抱いて欲しい。翔真が抱いてくれたら俺……、なんつーか……大丈夫な気がするんだ……」
「分かった。だからもう泣くな。な?」
智樹の言う”大丈夫”が何を指しての”大丈夫”なのかは、正直俺には分からねぇ。
でも普段から無口で、自分の気持ちをあまり口にしない智樹から出た言葉だ、今はその一言を信じよう。
俺は瞼を閉じたまま上向いた智樹の額に口付けると、そのまま唇をずらして行って、僅かに開いた柔らかな唇に自分のそれを重ねた。
性急に舌先を開いたその先へと突き入れ、緊張……しているのか、戸惑い気味に触れてくる智樹の舌先を、決して離すまいとする勢いで絡め取った。
お互いの息が続く限り深く、脳天まで痺れるようなキスを交わし、漸く唇が離れた頃には、智樹も……そして俺も、肩で息をする有様で……
「翔、お前……ヤニ臭ぇよ……」
予想通りの反応に、俺は思わず苦笑いを浮かべた。
「つか、お前もキスだけでこんなに硬くしてちゃ、後がもたねぇぞ?」
モゾモゾと膝を擦り合わせる足を開き、その中心で主張を始めた膨らみを握り込んだ。
その瞬間、智樹の身体がビクリと硬直したのを、俺は見逃さなかった。
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