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第9章 For You 4
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ラメを散りばめた素肌の上に小袖を纏い、緋色の長袴を履く。
この時点で足が出ない分、かなり動きが制限されるのに、その上に何枚かの着物を重ねられたら、足先一つ動かすのも一苦労で……
「重っ……。つか、これでまだウィッグも……なんだよな?」
自分でオーダーしておいてなんだけど、すげぇ不安になってきた……
尤も、大変なのは俺だけじゃなくて、着付けをしてくれている健太も汗だくになっている。
「聞いた話だと、総重量って言うんですか? 20キロくらいになるらしいっすよ?」
「マジか……」
やべ……、目眩しそ……
「ふぅ……、これでよし、と。後ウィッグ乗せたら完成ですから」
健太が額の汗を拭い、長く垂らした黒髪のウィッグを俺の頭に乗せる。
ウィッグ自体にも相当な重量があるらしく、重みで頭が後ろに引っ張られそうになる。
しまったな、こんなことなら事前に衣装着てリハやっとくんだった。
……って、今更後悔したところで本番までの時間は残り少ないし、どの道全部脱いじまうんだから、少々のことなら耐えられるか……
俺は深い溜め息を一つ落とすと、健太が用意してくれた姿見に自分の姿を映した。
その時、荒々しく階段を駆け上がってくる足音が聞こえて、俺は視線を姿見から楽屋のドアへと移した。
翔真の足音だ。
これまで何十回、何百回と聞いてきた足音だ、俺が聞き違える筈がない。
軽いノックの後、暫くしてゆっくりと開いたドアの隙間から覗いた顔は、俺が予想した通り翔真で……
翔真は俺を見るなり、驚いたように目を丸くして、健太がいるにも関わらず俺を抱き締めると、赤い口紅を塗った唇に、まるで貪るようなキスをした。
そして俺の耳元に唇を寄せると、
「見てるから……。一番良い席に座って、見てるから……」
囁く様に言って、そのまま楽屋を飛び出して行った。
後を追うことも出来ない俺は、ただ呆然とその場に立ち尽くし、翔真の唇が触れた場所を指の先でなぞった。
つか、あんなキスしやがって……、メイク崩れるっつーの……
俺は顔が……いや、身体全体が熱くなるのを感じていた。
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