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第9章 For You 12
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とは言ったものの…
会場になっているホテルに着いてすぐ、俺は滅多に発動されることのない我儘な自分の発言に、深く後悔した。
パーティ会場にいたのは、どいつもどこぞの会社のお偉いさんだったり……所謂、俺とは住む世界の違うセレブな奴らばかりで……
翔真に無理矢理押し付けられたスーツを着ていても、場違い感は半端ない。
「マジか……」
ポツリ呟いた俺の声を、翔真が聞き逃すわけもなく……
「じゃあ帰るか? 尤も、俺はまだ挨拶もしなきゃなんねぇし、親父の顔に泥塗るわけにもいかねぇから残るが……」
いつもは殆ど見せることのない、御曹司としての顔を崩すことなく……、でも俺の手を強く握ったまま言った。
「あ。それともう1つ。親父が俺達のために部屋抑えてくれたらしいけど……、お前が先に帰るならキャンセルしとかないとな?」
「えっ、そう……なの?」
あの親父さんが、俺達のために……
「ま、“俺達”と言うよりは、お前のためだろうな」
「俺……? なんで……」
翔真の親父さんが、俺達の関係を暖かく見守ってくれてるのは、俺も知っていたし、俺のことだって……
「俺が思うに、“ご褒美”のつもりだろ? “よく出来ました”ってやつだ(笑)」
なんだそれ……
でも仮に翔真の言う通りだとして、やっぱりそれとこれとは話が別だ。
俺はダンサーとして……、認めたくはねぇがNO.1ストリッパーとして、その責任を果たしたまで。
だだ……、褒められんのも、ご褒美も……、理由はどうあれ嬉しいわけで、それを受けないってのも、勿体無い話で……
「どうする? 断るか?」
そんなこと聞かれなくたって、答えは一つしかないだろ、翔真?
「折角の申し出だ、有難く受けようぜ(笑) 親父さんに感謝しねぇとな?」
俺は翔真の手を握り返し、視線の先で招待客と談笑する親父さんの元へと駆け寄った。
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