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第15章 Signs 6
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礼儀正しく一礼した男は、俺の隣に腰を下ろすと、俺の膝にそっと手を置いた。
雅也の隣に座った男も、同じように雅也の膝に手を置き、ネットリと絡み付くような視線で雅也を見つめ、そして突然のことに雅也が戸惑いを隠せずにいると、雅也の膝の上に跨り、曲に合わせて腰を降り始めた。
当然だが、局部だけを覆った小さな下着からは、男が腰を揺らす度先端が見え隠れしている。
それには流石の雅紀も驚きを隠せず、でも突き放すことも出来ず……
されるががまま、ネクタイを解かれ、シャツのボタンまで外され、挙句耳元に息まで吹きかけられている。
なるほどな、特別な接待ってのはそういうことか……
まあ、それが分かった所で俺はその接待とやらを受けるつもりはこれっぽちもない。
膝の上をサワサワと動く手を掴み、
「悪い、俺そういうのに興味ないから……」
冷たく言い放った俺は、勢い良く立ち上がり、戸惑いの表情を浮かべる男の顔を見下ろした。
「帰るぞ、雅也」
「う、うん……。あ、なんかごめんね?」
今度こそ立ち去ろうという時になっても、相手のことを想いやれる雅也は流石だと思う。
生憎俺は雅也のような優しさを持ち合わせてないし、受けたくもない接待に礼を言う義理を通す必要すら感じていない。
モタモタと身なりを整える雅紀を置き去りに、俺は足早に店の外へと出た。
「ちょっと待ってよ〜」
情けない声を上げながら雅紀が俺の後を追って来る。
でも俺はそれにも構わずスタスタと、大通りに向かって足を進めた。
オーナーの顔を拝むのを忘れたが、そんなことはどうでもいい。
兎に角、何に……と言うわけじゃないが、無性に腹が立って仕方なかった。
しかも、こんな時に限って、目の前を通り過ぎるタクシーの行灯は、どいつも消えてやがる。
「クソッ……」
「もう、何イライラしてんの?」
足元に転がっていた空き缶を、苛立ち混じりに蹴り飛ばした俺を、漸く追い付いて来た雅也が咎めた。
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