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「その本、好きなの?」
「えっ?ああ、作者が好きで」
「…ふーん?そっか」
「?」
にこにこ?にやにや?しながら見つめてくる。この人も好きなのかな。
「七瀬さん、も本読むんですか」
「うーん、僕はあんまり」
「そうなんですか」
どうやら違うらしい。
「「………。」」
いいや、もう気にしないで続き読もう。
「……。」
「………。」
視線が痛くて内容が入ってこないよもう!!!!
「あの、ぼ、僕の顔に何かついてますか」
「ん?えっと、目と鼻と口が付いてるね。目はほとんど見えないけど」
「……。」
「……。」
「前からここに来られてたんですか?」
「え?」
「いや、シュウさんと親しいようだったので」
「ああ、僕すぐそこの大学の卒業生でさ、学生の頃から通ってたんだ」
「えっ、僕そこの三年です」
気づけば以前から知り合いだったかのように話していた。先ほどまで警戒心丸出しだったのが嘘のようだ。七瀬さんは学部は違ったものの今の大学生活の話をすると懐かしそうに笑った。
「図書館のおじいちゃん司書さんってまだいる?」
「ああ、渡さん?いますよ!めっちゃ元気です」
「あの人ちょっとでも私語するとすっごい怒るよね 笑」
他愛もない話で盛り上がっていると七瀬さんのスマホが鳴った。
「ごめん仕事の電話だ」
「あ、どうぞどうぞ」
電話で話す仕草が様になっていて、思わず見つめてしまう。しばらくすると電話を終えた七瀬さんが申し訳なさそうに、
「颯くんごめん、仕事のことで呼ばれちゃった」
「あ、じゃあ僕も帰ります」
「そう?ごめんね」
会計をしようと財布を出すと「大人に甘えときなさい」って満面の笑みで言われた。なんとなく断らせてもらえない雰囲気だったのでおとなしくお礼を言う。
「じゃあ、気を付けて」
「ありがとう、颯くんもね。楽しかったよ、またね」
七瀬さんと別れ、ひとりになるとなんだか夢から覚めたような不思議な気持ちになった。
眩しい人だったな…。またねって言ってくれた。
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