アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
41
-
「お客さん、この辺で?」
タクシーが静かにとまる
電車やバスもいいけれど、タクシーだと家の目の前まで送ってくれて、それはやっぱり良いところだよなと改めて思う
「はい」
「…いい、俺出す」
「いや、いいよ。どうせタクシーで帰ろうと思ってたし」
「宿泊代」
「気にすんな」
財布をしまわせ払う
てかこいつ財布まで黒。どんだけ黒好きなんだよ
「うわ、広。稼いでんだ」
「まぁそれなりに病院務めて経つしな」
「今何歳?」
「この前32になったところ」
「へー」
街の光とは違い、俺の白と黒で統一したようなシンプルな部屋に絢の髪は結構派手で、片目の眼帯も目立って見えた
「目、悪いの?」
聞いたのは無意識だった
絢を見ていたら気になって声に出た
これは流石に無神経すぎたか
「………悪いよ。義眼入れてる」
ごめん、と謝るより先に絢はそう言って眼帯を綺麗な指で押し上げた
元々目が悪いのだろう
特に外傷はなかった
自力では開かない瞼を持ち上げ、義眼と言った瞳が覗く
「俺の好きな色。」
目の色は髪の色と同じ、深く透き通った紫だった
器用に片手で眼帯を避けたり瞼を開けたり。
また直ぐに隠した
「そっちは見えてんの?」
「いや、あんまり。この前やった時はCだった」
「コンタクトは?」
「してない」
「メガネする?初めての場所だと見えてないのは危ないだろ
妹が目悪くて、家に来た時にメガネ置いていくんだよ。どれかは合うだろ」
「いい。」
「いや、しとけ。転ぶぞ
この辺か?ほら。」
「やっ、めろ…だから触んなって。分かったから」
メガネをつけた絢が顔を上げる
あ。やっぱり違う。
「…うん。」
初めて、視線がしっかりと合った気がした
「夕飯用意するから少し待ってろ」
「作ったりするんだ?」
「こう見えてプロフィール、趣味の欄に料理とか書くやつだよ俺は」
「プロフィールまで胡散臭い」
「すぐ人のことバカにする」
「お前に限ってだ。
そのいい人ぶってる感じがムカつく」
「普通にいい人かもしれないのに?」
「それはない」
まぁ、絢の勘は間違っていないだろう
人に親切にするのだって本心からそうしたい訳じゃない。そうした方がいいという固定概念が俺を動かしているだけ
本心で何もかも行動するやつになれば俺は、相手を傷つけてばかりだろう
…束縛は激しすぎるし、セックスだって乱暴だ
本心というものは自分で制御できなければ相手を傷つけかねない
いつしか「こうした方が正しい」それにばかり囚われ俺の狂気じみたような本心は隠すようになっていた
絢はそれを分かっているのだろう
俺が「良い人」という枠で取るに足らない大人だということが。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 375