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「俺と付き合って。」
「またそれ?」
「絶対に後悔はさせない」
「重い重い。もし付き合うとしてそんな気負わなくていいって」
「それくらい責任は持って告白してる」
「えー?まじじゃん」
「マジだよ。俺だけにしてくれない?」
「ふっ…はは…
そんなに俺のこと好き?」
「だから好きだって言ってるだろ」
「うーん、いいよ。付き合っても。
この前付き合ってた人とは別れたし。」
「じゃあ、今は誰とも付き合ってないの?」
「うん、フリー」
食べに来たのは個室のある懐石料理の店だった
別れたのはゆきに言われたからではない。ただ向こうが飽きたらしい
別れようか、と言われたから頷いただけ。
「じゃあもう他見ないで」
「えー」
付き合うこと自体はいいけれど、その、他とヤるなとか言うタイプの人だから難しい
性欲が凄いって訳じゃないけど、もうほぼ習慣みたいに毎日やってる訳だし、それこそゆきの気分じゃない日はどうするんだって感じだし。
それにそういう現場で遭遇して修羅場になるのもごめんだ
「最初は…俺以外としても………いい、し、必ず家にいるようには言わない。
それなら、いいか」
すんごい渋い顔をして言われる
嫌なのがバレバレ過ぎてなんか笑える
でもそれなら問題ない。
「いいんだ。だったら全然いいよ」
「ただし、その時は連絡ちょうだい
俺、本気だからね。いつかは絶対やめてもらう」
「…うわめんどくさ。まぁでも了解。
付き合ったら俺尽くすタイプだし?」
一応、恋人という関係になった人と他の人とは少し分けてる
例えば予定が入っていても付き合った人に今から会えるかと言われればそっちを優先するし、ご飯一緒に食べたら必ず俺が払うようにしているし、あとはセックスも相手の性癖に合わせる
欲しいものがあれば買ってやるし、相手からの注文であれば連絡だってちゃんとする。なんなら料理とかだってしてやる時もある
監禁もどきみたいなことをされたこともあったけど、それも嫌がらずにちゃんと従ったし。
意外と、尽くすタイプなんだ俺は。
でもこの話をすると一定数に「クズ製造機」と言われる。製造してねぇし。
「じゃあ絢、改めて今日からよろしくね
好きになって貰えるように頑張る。てか絶対好きになれよ」
「え、俺が頑張る感じ?
ふふ、まぁいいけどさぁ、なんでも。
でもゆきと付き合うとか不思議な感じする
ゲイっぽくないし。
ゆきみたいなタイプ初めてかも。そもそも好きだから付き合いたいとか稀だよね」
「だって俺ゲイじゃないし。絢のことが好きってだけ。
普通、好きだから付き合うんだろ」
「…恥ずかしいやつ」
まさか医者なんかと付き合うことになるとは思わなかった
勝手なイメージだけど、医者って頭良くてちゃんとしてる大人。って感じ。だからこそ、俺みたいなこういう生活してるやつが付き合うような人種だとは思ってもみなかった
しかもゆきは俺のことを知らない
だから好き、なんて思えるんだ
知らないでしょ?
俺が病院に通っていることも、
人を殺しかけたことがあるってことも、
もう今更普通の暮らしなんてできる訳が無いほど、汚くて乱れた私生活のことも。
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