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96 1ヶ月記念日
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「絢」
「え、どこから来たの」
ゆきの家に着く少し前、店の並ぶ通りをイヤホンを付けながらぼけっと歩いていたら後ろから名前を呼ばれ振り返るとすぐ後ろにゆきがいた
「ちょうど帰ってきたとこ」
「ふーん」
「なぁ、昨日どこいたの?」
「家だけど。」
「もしかして、いや、もしかしなくても、てか絶対のことなんだけど、…体調悪かった?よな」
何となく、頷いてしまってもいい気がした
ここで意地張らなくてもいいなって。
いつもならプライベートに踏み込まれているようで「別に」と答えるのが常だけど。
俺はちら、とゆきを見てから小さく頷いた
「やっぱり。今は?もう平気か?」
あぁ、ほら。
頷いても大丈夫だ。
ゆきにならこういう事を、少しだけ教えてもいい。
聞いてくるなら、少しだけ。
「大丈夫だから来てる」
「そっか。昨日、電話でてくれてありがとな」
「ゆきだったから、でた」
「…そっか。うんうん、そうか。可愛いなお前は」
「わ、やめろ…髪乱れる」
よしよしと撫でてくる手。うざくて払った。
ゆきは俺を分かってくれる
何も言わなくても汲んでくれる
本当は昨日ゆきのそばに居たかったこと。
本当は苦しくて言葉を発するのも辛かったけど、行けていないことが申し訳なくて電話に頑張って出たこと。
…怒っていなくて、安心したこと。
どこまで分かってくれているんだろう
どこまで分かっていたら「電話に出てくれてありがとう」と言えるんだろう
どこまで分かって、俺がその言葉でホッとすることを知っているんだろう
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