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98 1ヶ月記念日
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「絢、早く。」
「うるさいな分かったから」
実際少し怠くて、横になるとちょっとだけ楽になった
「変に配慮するのやめてって言ったじゃん。別に構って欲しい訳じゃないから」
「本調子じゃないだろ。
構って欲しいとかそういう気分のレベルじゃないよ今の話は。
絢が元気な時にわざわざ持ち出すようなことはしないけど、昨日今日でまだ少しでも辛いんだとしたらそれは放っておけないし、無理はして欲しくない」
「…ほんと、大袈裟。」
突然真面目に意見してきやがった…ムカつく…
その後、油っこいものはダメ。なんて言ってポテトまで取り上げられた
する事もなくなって取り敢えずソファの背もたれに顔を埋め、ゆきには背を向ける
少しすると暖かいし何もすることないしで眠くなってきた
相変わらずゆきが何を考えているのかは分からない
ただ、ずっとすぐ背後に気配を感じる
…気になる
言いたいことがあるならはっきり言えよ
後ろからじっと見るな
「…なに。」
耐えきれなくなって口を開けば案の定そばにいたゆきは「その…」と珍しく口ごもった
「え、なに。」
「吐いてるところとか、過呼吸起こしちゃってるところとか、見られるのは嫌?」
「見られて嬉しくなるやつはいない」
まぁそういう性癖のやつもいるけど。俺にその趣味はない。
背を向けたまま小さく言葉を落とす
「じゃあ、嬉しくなくても、無理ではないよな」
「何の話?」
「絢の、話」
「何が言いたいの?はっきりして。ゆきっぽくない」
結末の見えない問いかけに、何が言いたいんだと渋々視線を向ける
いつもぐいぐいくる癖に。
するとそこには不敵な笑みも、余裕そうな顔も、バカにするような笑顔もなくて、顔を上げたゆきは眉を寄せ、ほんとに「心配です」って顔をしていた
「これからはさ、俺がそばに居てやりたいって思った」
そう言い切ると何故か背中を弱く叩かれた
「ふは、なにムキになってんの。かわいーね」
ゆきはいつも1枚上手で、掴みどころのない余裕たっぷりのやつだと思っていたけど、今はなんだか同じ世界にいるような感じがする
友達というか、ゆきの気持ちが初めて伝わってきたかのような。
それが分かると途端に少しだけ子供に思えてきて苦笑する
「昨日は辛かった時、ひとりにしてごめん」
ゆきはまだ言葉を続けた
さっきの可愛さは何だったのか、もういつもの戸惑いのない言葉の発し方にゆきを感じる
てかなに。1人にしてごめんって。
どんだけ、俺が独り占めしていいみたいな言い方するの。
「そんな優しくしてくれんの?」
ほんと、優しくて、寄り添ってくれて、一緒にいて楽しくもなったりして。
なんかゆきのこと、柄にもなく本気で好きになってしまいそうだ
「絢が好き。
もっと知りたい、そばに居たい。
こんな少しだって離れたくないし見てたいと思うほど好きになるの初めて。
だからって言い訳する訳じゃないけど、どうしたらいいか正直分からない。
どうしたら絢が近づいてきてくれるか分からない
どうすれば信用してもらえるか。
けど、どんな形であっても絢が頼ってくれるなら絶対に不安にさせないように努力する
頼りやすいようにどうすればいいのかもちゃんと考える
だから絢、俺の事信じてほしい。頼って欲しい。
助けて欲しいと思った時に真っ先に浮かぶ人でありたい。ほんとに、本気だから
だから1人で無理すんな、マジでやめて」
ゆきってほんとに俺の事好きだよな
俺みたいなやつの何処がいいのか。
そうは思うけど、正直嬉しかったんだと思う
俺は初めて、信じてみたいと思う人を目の前にした気がする
もう、いい。
もういいや。
どうにでもなればいい。
俺は、ゆきに…頼りたい
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