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167 sideゆきひろ
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sideゆきひろ
「楽しい?」
ベッドに寝転がりながらこの前買った深海の生き物の写真集を見ている
想像以上に熱心に見ていた
「んー、なんか紙めくること自体新鮮」
言いながら音を楽しむようにペラペラと捲っている
「本、ほんとに読まないの?」
近づくと絢はさり気なく隣を開けてくれて、そのスペースに横になった
「読まない
読むにしても漫画くらいだしスマホで読んでる」
「へぇ、漫画とかみるんだ。何興味あるの?」
「俺は別に。オススメされたら読んでるだけ」
「今まで面白かったのある?俺もそれ読む
感想とか言い合ったら楽しそうじゃない?」
「別にない
あんまのめり込むタイプじゃないし。もう覚えてない」
「ふは、やっぱそんな感じなんだ」
「ゆきは本なに読むの?」
絢の視線はまた写真集に戻っていた
「俺は専ら心理学系かなぁ」
「仕事にもしてるし好きなの?そういうの」
「んー。いや?
ただ俺ズレてるじゃん
現に絢が苦しんでても可愛いなーとか思ったり、昔は恋人に束縛激しすぎーって振られるくらいで。それでもマジじゃないのにさ?
苦手なの。人付き合い。
俺のこんな話聞いてもつまらないと思うけど」
「そこまで言ったなら気になる」
思い返してみると俺の心の内というか、今に至る経緯を誰かに話したことってなかった
就職のときに志望動機、なんて書いたけどあれはもはや美化しすぎているし、本当の事は書いていない気さえする
「まーそれでさ、人並みに悩んだりもした訳。
みんな何考えて生きてるのかなぁ、て。
だって苦しんでる人を見たら助けたいと思う人しかいなくて
好きな人には優しくしたいと思う人ばかりで、
それこそ人が死んだら悲しむとか泣くとか。
俺はどこか抜けててさ。
淡白っていうの?
そんなんだったから、逆に気になった
みんなどうしてそういう風に思えるんだ、って。それで心理学を勉強し始めた
そしたらこの客観性が意外と生きやすいってことに気づいて、何ならそっち系の結構いい大学も入れて。そこから今の職業って感じ
正直絢に会えて、俺こんなに人のこと好きになれるんだってびっくりしたし嬉しくなった
俺は淡白だったんじゃなくてそういう人に出会ってなかっただけか、って。
ありがと」
「最後の意味わかんない。
でもゆきもそんな風に悩んだりするんだ
ふは、よしよし〜」
絢は小馬鹿にしたようにくしゃ、と俺の髪を撫でた
絢は俺とは違う。
もっと言うなら逆くらい。
彼は人よりよっぽど色んなものを感じやすいし、考え込む。人の気持ちに敏感で、優しい奴。
自分に持っていないものを持っているとその人を好きになりやすいと言うけど、そういう事なのだろうか
でもそういう定型にはめ込まれるのも嫌だな
俺はそういうの無しでも絢を好きになっていたと思う
だってこんなに「好き」そう思わせてくれる人は今まで誰もいなかった
それだけ彼は魅力的な人物だから。
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