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「大丈夫。無理矢理は行かないよ?」
ぼろ、と涙が零れた
突然だった。どうして?
ゆきは俺が泣いたことを、俺より先に気づいていた
涙は直ぐにマスクに滲む
きっと視力検査をしたからだ。
目の筋力が疲れてるから、抑えたりできない
ゆきはどうしたーなんて言いながら背中を撫でる
そんなの俺にも分からない
ただ、ゆきが好きなのにどうしてこんなに汚れてしまっているんだろうって思っただけだ
雑貨屋から出て、細い路地に入ると外の世界から塞ぐように前から抱きしめられた
未だに止まらない涙
「…っ、ごめ」
「謝らなくていい 大好きだよ」
タイミング意味わかんない…
大丈夫、大丈夫。何度もそう言い聞かせられ、大好きだと囁かれた
気持ちが上手くまとめられない
次第にイライラしてきてしまって、その事実に焦って。その次は怖くなってきた
胸がドキドキしてくる
呼吸が早くなってくる
やばい、かも…
「ッ…は、っ」
こんな所で過呼吸なんて嫌だ
今日これ以上迷惑をかけるのは嫌だ
…嫌だ。
「っ…うぅ、」
涙がぼろぼろでる
もうやだ。
訳わかんない
乱暴に左目に自分の袖を押し付ける
「ぐす…はぁっ…」
もう、なんで。なんで。
「絢。」
「絢、こっち見ろ」
「や、だっ」
「見ろ。」
だって怒ってるじゃん
強く名前を呼ばれたことで体がびくりと震えた
「ほら、こっち見る。」
いつの間にか座り込んでいたのか
ゆきはしゃがんで目線を合わせると、目を擦り続けていた手を取って握り、顔を上げさせた
「大丈夫。な? 大丈夫だから」
はっきり、ゆっくり言われる
取られた自分の手が震えていることに気づいた
「大丈夫。大丈夫」
ゆきは周りの目なんか気にしないで俺の手を取ってひたすらに言葉をかけてくれる
勝手に出ていた涙も、震えも、乱れた呼吸も、気持ちも、いつの間にか全てが落ち着いていた
「…今日メンヘラ極まってる。」
擦り過ぎでひりひりした目元に触れながら小さく呟く
「どんな絢でも俺はいける」
「いけるって何」
マスクが濡れて気持ち悪くて、取り替えようと一瞬だけ外す
ゆきはそれを待っていたかのように一瞬の隙をついてキスしてきた
「っ」
触れるだけの軽いやつ。
けれどそこからじんわりと熱を持って、不安定な気持ちを温めてくれるような、不思議な感覚だった
「いきなりするなビビる」
「キスしてって言ったのは絢じゃん」
「言ってねぇし」
ぺし、とゆきの足を叩けば「そうだっけ?」と頭をぽん、と撫でられた
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