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「葵…?」
「じゃあどれ選んだか言葉で教えて?」
真慕はんーと小さく唸りながらも「紺色の、長袖の…」と拙い言葉で教えてくれる
「何でそれにしたの?」
「…だって、それ見たら、車で出かけた時のこと思い出した
月が大きい日だからって高いところに行った時の。
あの時、すごく久しぶりに外に出て、暗くて誰もいないのに、葵、嬉しそうだし…それが、俺の中の葵みたいだった
その、誰もいて欲しくない俺の中で葵が嬉しそうに近づいてきてくれる、感じ…。
そしたら、ぶわーってなって、…
それ思い出したら、また着て欲しいって思った」
確かスーパームーンだったかな
夜に見に行ったことがあった
あの時の真慕は今より全然喋ってくれなくて、せっかく見に行った月も見上げもしないで俯いて、自分の手元をじっと見てた
椅子に座ったっきり、動かないし声も出してくれないし、月も見ていなかった
それでも真慕はここに俺と来ることを頷いてくれて、今居てくれているんだなと思うとどうにか心地良い思い出にならないかって考えた
色々声をかけていると突然泣き出しちゃって、それはそれは焦った
でも今こうして言葉にしてくれて、あの時の静かで無口だった真慕も色々感じてくれていたんだなと嬉しく思う
「今回もいい思い出が沢山出来るといいなぁ」
もはや独り言のように呟く
真慕にとって俺はどういう存在なんだろうと考えたことは何度もある
けれどそれを真慕に聞ける機会なんて無かった
今の話は聞けてよかった
本当に。
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