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ハンガーに服をかけ終えると、向かいの座布団を隣に置いた
その姿は家で洗い物を終えて、ソファで脱力する俺の隣に座る姿と重なる
あぁ、どこにいても俺は何もしないな。
「さっき面白いの見つけたんだ」
そんな俺に嫌な顔ひとつせず隣にいてくれるのはいつも葵。
初めて出会った時から今日の今まで、1度だって葵が何かを面倒くさそうにだらける姿は見たことがない
家事や掃除も「やって。」なんて一言も言われたことがないし料理を残す俺にも苛立っている姿は見せない
葵っていつも穏やか。
何でなんだろう。
嫌だったり、イライラしたり、めんどくさかったりしないのかな
「これ。今日の予定に入れてなかったけどありじゃない?」
なんでこんなに優しいの。
俺は何一つ返せていないのに。
「…分かんない」
「真慕好きだと思ったんだけどなぁ」
俺を見る目はいつも優しくて、綺麗。
葵には俺がどう映っているんだろう
本当は、こんなに素敵な人を取り留めておける力も魅力も、何も無いのに。
「…うん。」
葵が楽しそうに開いてくれたこの地域のPRパンフレットも中々頭に入ってこなくて少し俯いた
「真慕?」
「…っ、…」
いつもと違うところにいるから?
葵だけがいつも通りだから?
分からないけど、葵がいつも俺にくれている安心とか、優しさとか、言葉とか。
色んなものが溢れて、そうすると益々葵は素敵な人に思えて、いつか愛想を尽かされたらと勝手に不安になる
「どうしたの」
そっと優しく触れられる
それから確かめるように力が込められて、胸の中に閉じ込められた
「大丈夫だよ。
怖くないから、だから泣きそうな顔しないで?」
だから葵は、なんでそんなに優しいの。
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