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「美味しいね〜」
「うん」
小さく表情を緩める真慕
まだ多少警戒されているが初めて会った時より随分と柔らかい雰囲気を見せてくれるようになった
それは最近なにか心境の変化があって取り繕う雰囲気が変わったのか、それとも単に初対面の俺に警戒していたのか。
どちらかは定かではないが、半年前よりも表情を見せてくれるようになったのは事実。
葵は勤務中、割とさっぱりしているタイプ。
話しかければ普通に会話はするし、笑ったりもする。
けれど、隙を見せないというか、仕事とプライベートは分けている印象
誰に対しても常に敬語だし、話も聞く側に回ることが多い
自分からプライベートの情報は話しているのが見た事がないくらいだった
少し前から一緒に飲むようになってその時初めて真慕の話を聞いたし、それまでは全く知らなかった
「これあげる」
「いいの?ありがとう
それじゃあ真慕にも俺のあげるね。
どれなら食べられそう?」
とにかく真慕が好きなのだろう
嫌いなものを渡されただけなのにそれはもう嬉しそうに感謝の言葉まで述べている
どちらかと言えば神経質で警戒心の強い葵だけど真慕の前ではそれを感じない
表情を緩ませては声をかけ、少しでも反応があればそれだけで満足したように頷いていた
目の前に人がいるとその人を観察してしまうのは職業柄いつの間にか癖になっていた
今までの俺はそんな人達を客観的に受け止めることしか出来なかったけれど、今は違っていた
俺にも『好き』という気持ちを理解させてくれる相手がいる
その存在を確かめるように隣を見ればふたりの甘い雰囲気に飽きたのか欠伸をマスク越しに噛み殺していて可愛いが溢れでた
「…なに」
直ぐに視線に気づいて不満そうにジト目を向けられる
絢のことを見ると、それだけで気分が高揚するのが分かる
どうしてこんなにも大事にしたくなるのか。
どうしてこんなにも特別感があるのか。
何でも客観的に感じることしか出来なかったのに、絢を見ると考えるよりも先に気持ちが溢れてくる
思わずため息が出てしまいそうな程、すぐ隣にいてくれるという事実に胸が熱くなった
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