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俺と真慕が初めて会った時。
それは真慕が中学生になる直前。
あの事件で真慕がうちの病院に入院していた時のことだ。
生々しい傷がまだたくさん残っていて、高熱や嘔吐、幻聴なんかの症状も出ていた
会いに行く度に真慕の顔色は悪く、身体も細くなっていった
フラッシュバックで暴れてしまったり過呼吸になってしまう姿は思い出すだけで涙が滲みそうになる程、可哀想でならなかった
その姿は10年近く経った今でも思い出すと鋭い痛みが胸を刺激して、やるせない思いが募る
「…」
その時のことで、ずっと気になっていたこと?
「…あ、葵さ…ほんとは面倒くさかったんじゃないの」
面倒くさい?
何が。
真慕の言おうとしていることをすぐには理解できなかった
「俺、人がいるってだけで怖くて、頭の中もぐちゃぐちゃで、息でさえ苦しくて、…いつも、ずっと、体も痛くて…っ
葵が撫でてくれた手、払った。かけてくれた言葉も…あの時は自分が何してるのかさえ分からなくて、とにかく怖くて堪らなくて…
でも俺、最近不思議と思い出せるの。
聞こえなかったはずなのに葵が「もう大丈夫」ってずっと言ってくれたの…っ
お腹痛いの?頭痛いの?て撫でてくれてたこと。
なのにひたすら……っ俺、ずっと気になってた」
真慕の目からは涙が溢れていてそれでも真慕はきゅ、と唇を噛んでから覚悟したように口を開いた
「…俺が可哀想だから、一緒にいるの?
あの時、葵はお父さんやお母さんに俺のそばに居てって言われたの?
葵は優しいから、断れないから渋々俺の相手してくれたの?」
だって俺、葵以外の人が無理だったから。と続ける
確かにあの時の真慕は「大人」が男女関係なく恐怖の対象だった
当時まだ大学生で社会人として働いていなかった俺は真慕に大人という印象を強く与えず、他の人より拒否症状が少しだけ小さかった
でも、それでも真慕は怖がっていた
ずっと俺が嫌々やっていると思ってた?
人に言われて、断れなくて。って?
そして今も、そんな思いをした真慕が可哀想だからという同情で?
「…違う、って…言って欲しい…っ」
そう言ってぼろ、と泣き出した姿に息が詰まった
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