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彼体操服①
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強風のせいでせっかく咲いた桜が散っている。
そこらじゅうに桜が舞っているし地面にもたくさん落ちている。
勿体ないな、なんて思いながら歩くこの道も一年経つと随分と見慣れたものだ。
そんな今日から新学期が始まる。
無事に進級が出来て次は高校二年生。
せっかく馴染んだクラスも仲良くなれた人ともさようなら、また最初からだ。
「おはよ、ふゆたん!どうしたんそんな暗い顔して」
「おはよう。クラス替えが不安だったんだ」
「あーだよねー。ふゆたんはなつやんに面倒見られてたからねー」
校舎に足を踏み入れた時に声をかけられた。
彼は同じクラスで仲の良かった千葉くんだ。
明るく気さくで誰にでも分け隔てなく接することの出来る人気者。
髪が明るめの茶色だからしょっちゅう頭髪指導を受けているイメージが強いが、教師の中でも髪色以外は評判がいい。
「面倒見てないと鈍臭いから不安だろ」
「うぅ…。ありがとう」
千葉くんが“なつやん”と呼んでいた僕の面倒を見てくれる彼は相賀夏希(そが なつき)くん。
僕は冬木一星(ふゆき いっせい)だから夏と冬で季節コンビなんて言われていた。
まるで夏と冬みたいに性格も真逆。
周りの人はどちらかといえば冬っぽい寒く冷たい性格なのは夏希くんだなんて言うけれど、僕はそうは思わない。
十分優しくて暖かい性格をしていると思う。
それに目の色は優しいオレンジみを帯びた茶色で夏の太陽に見えるし髪色だってギリギリ頭髪指導にひっかからないくらいの暖かい茶色。
まさに夏ってイメージだと思う。
それに僕は真っ黒な髪色に真っ黒な目でとても夏って感じではない。
「クラス発表までまだ時間あるのかー、早く来すぎたな」
「夏希くんとクラスが離れたら僕はどうしたらいいのかな」
「…平気だろ。お前放っておけないタイプだから誰かしら面倒見てくれるって」
「ダメダメー!ふゆたんを完全理解してんのはお前だけだろ?なぁふゆたん?」
僕を理解してるのは夏希くんだけかぁ。
本当にクラスが離れてしまったら友だちできるのかが不安でたまらない。
クラス発表の時間が近づくにつれ心臓が口から飛び出そうなほど緊張してきてしまう。
一年生の頃はずっと夏希くんがそばに居てくれた。
千葉くんは色んな人と行動を共にする中で、僕たちといたこともあった。
クラスの人とは話すし仲良くしてくれる人もいるけれどほとんどの時間を夏希くんと過ごしていたため離れてしまうことが不安でしかない。
「ドキドキしてきた…」
「まだ気が早いって」
「夏希くんはすぐお友だちが出来そうだけど僕はそんな…人見知りだし…」
「…別にお前が人見知りなのとは関係なく話しかけてくる奴はいると思うけど」
夏希は優しいから僕が不安がっているのを和らげてくれようとしているんだと思う。
あまり表情を変えないから最初こそは気難しい人だなと思っていたものの、今はその表情の奥にある気持ちが読み取れている気がする。
あまり夏希くんに心配をかけていたら迷惑になってしまうからたとえクラスが離れたとしても頑張らなくちゃならない。
「あっ、見て!先生たちがクラス表持ってる!行こうふゆたんなつやん!」
「ほらほらー順番だ、みんな押すなよー」
「先生!そこ邪魔だよ!見えねーもん!」
「なっ……!おい千葉!髪の毛さらに明るくなってないか!?」
「うわやっべ」
「こら!待て!」
千葉くんは恒例の先生との追いかけっこが始まった。周りの人はそれを見て「またやってるよ」と笑っている。
この光景を見ると少しホッとはするもののクラスが気になり出すとまた不安になる。
クラスの表が壁に貼り出されると待機していた人たちが一気に押し寄せ、そのせいでせっかく貼りだされたというのに何も見えない。
僕は背が高くないから周りの人に埋もれるのに時間はかからなかった。
でも隣にいる夏希くんがずっと肩に手をまわして僕がはぐれないように守っていてくれた。
「夏希くんありがとう」
「あー……俺二組だ。冬木は四組だから離れた。ちなみに千葉は三組だからちょうど並んでる」
「は、離れたの……?どうしよう…僕友だち作れるかな」
学年が上がる際には交流を増やすために仲良かった人は離されるという噂を聞いたことがあったけれど本当だったなんて…!
先生たちには心がないのかなんて思ってしまうが、確かに交流を増やすのは大切なことだろう。
仕方が無いけれど不安が加速する。
「まぁ…なんかあったら二組に来たらいい。なんなら三組なら千葉がいるだろ」
「ありがとう…」
落ち込んむ僕を気遣い頭を撫でてくれた。
こうして雑にくしゃっと撫でてもらうのはすごく好きだしなんだか落ち着く。
仲良くなりたての頃からよくしてもらっていた。
「季節コンビと離れちゃうなんて俺寂しいわー」
「千葉くん戻ってきてたんだ!隣のクラスだよ」
「俺の足の速さを舐めてもらっちゃ困る!隣のクラスなら俺ふゆたんに会いに行くわ!」
千葉くんも同じように僕の頭をくしゃくしゃと撫でてきた。すると必ず夏希くんがいつも阻止する。
「お前の馬鹿力で冬木が可哀想だ」
このお決まりの言葉と一緒に。
まるで僕を撫でていいのは夏希くんだけ、そんな気がして嬉しいななんて思ってしまう。
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