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恋はBLのようにはいかない Ⅰ
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Ⅰ
俺は三鷹 駿。BLをこよなく愛する高校生。同人誌を書くにせよ、コミケで好きな本を買うにせよ、どうしても金がいる!ということで、前から気になっていた喫茶店カフェダイムでアルバイトをすることにした。
学校の帰りに寄った喫茶店だったが、とても居心地が良かった。そしてマスターの結翔さんがとても優しいのが決め手だった。
(ただ、結翔さんの周りはどうもBLの匂いがプンプンするんだよね・・・。)
ほぼ毎日やってくるお客さんで設楽 智さんがいる。すらっとした長身でほどよく締まってて、端整な顔立ちはまさにイケメン。
智さんは、朝にモーニングを食べて、夜は閉店間際にやってきて夕ご飯を食べていく。元々口数は多くはないんだけど、長年連れ添った夫婦のように結翔さんは智さんにさりげなく尽くしている感じが垣間見えた。中学からの同級生とは言っていたけど、こんな感じになるのかなぁとちょっと思う。でも、端から見てるとそのやりとりが心地よい。
もう一人、高校の同級生という杉並 薫さんがいる。薫さんも細身のイケメンだが、智さんとは逆でふわっとした雰囲気をまとった顔をしている。薫さんはいろんな時間にやってくる。
「あ、いらっしゃいませ、薫さん。」
「おー、駿くん、今日もイケてるね!」
薫さんはいつも茶化してくる。
「今日はちょっとおなかすいてるんだ。結翔~なんか作ってよ~。」
「オッケー。」
結翔さんがテキパキと料理を作り始める。俺は薫さんにいつものブラックコーヒーを持って行く。
「薫さんは、結翔さん大好きっすよね。」
「んー、結翔大好きだよー。あ、駿くんも大好きよー。」
「おまけで言わないでください。」
俺はちょっとこの薫さんが気になっている。いつも明るく振る舞っている薫さんだけど、時々見せる何か遠くを見つめる表情を、俺は気づいていた。
『駿くん、今日少し時間あるかい?』
小さな声で薫さんが言った。
『大丈夫っす。』
『じゃあ、夜に迎えに来るね。』
薫さんが軽くウィンクした。
店から少し離れたところで薫さんは待っていた。夜でも薫さんは目立つのですぐ分かる。
「遅い時間だけど大丈夫なの?」
「ああ、うちにいるの親父だけなんで、連絡しとけば大丈夫っす。」
「どうしたんすか?」
「うん、ちょっといろいろ頼みたいことがあってね。」
「そうっすか。俺もちょっと薫さんにお願いしたいことがあったんすよ。」
「なら利害一致だね。俺んちすぐ近くだから、部屋来るかい?」
「襲わないっすよね。」
俺はちょっと茶化して言った。
「襲わないよ~。」
薫さんは笑った。
薫さんの家は駅前の高層マンションの最上階だった。会社を立ち上げたとは聞いていたけど、こんなところ住めるん?と正直驚いた。
「ここはうちの親が買ったマンションだから。今海外行っちゃって誰もいないんで俺が住んでるの。」
(顔に出ちゃったかな。)
「そうなんすね。」
リビングはガラス張りで、小さい待ちながらも夜景がきれいに見えた。
「うわー、ここに連れ込まれた人は、イチコロっすね。」
「あら、駿くんも俺に惚れた?」
薫は笑った。
「残念ながら、俺はこういうシチュエーション、書き慣れてますからねー。」
俺はさりげなくかわす。
「まあ、ここに連れてきたの、結翔に次いで二人目だけどね。」
薫さんは俺の目を見て言った。
「ところで、駿くんの頼みは何?」
「俺からでいいんすか?」
「うん、いいよ。とりあえず何か飲み物持ってくるから。」
そう言って薫さんは冷蔵庫からリンゴジュースを持ってきた。俺はテーブルの上にちょうど持っていた自分が書いたBL本を数冊並べた。
「へぇ、これが噂の駿くんの作品。」
薫さんは1冊手に取るとゆっくり読み始めた。
「す、すごいね。ここまで書くんだね・・・。」
ちょっと顔を赤くしながら薫さんが言った。
「この本はそんなに過激じゃないんすけどね。」
「えっ、もっと過激なのもあるの?」
薫さんは目を丸くする。
「薫さんにお願いって言うのは、実際のゲイの方のリアルな体験を聞きたかったんす。」
「え、あ、そうなの?」
薫さんはちょっと困った顔をした。
「あ、無理にとは言わないっす。」
「うーん、そうか、話が出来ることがあれば教えるんだけど・・・、俺は結翔一途だったから、実は経験ないんだよね。」
「えっ?そうなんすか?!」
俺は素直に驚いた。BL漫画界で描いたとしてもイケメンの部類に入る薫さんが経験なかったとは・・・。
「でもここに結翔さん連れてきてるんっすよね?」
「まあね、でもね、何も出来なかったよ・・・。まあ、実は俺から駿くんへのお願いに通ずる話になるんだけどね。」
薫さんは俺のBL本をテーブルに戻すと、真面目な顔になって俺の目を見た。
「俺は結翔に幸せになってほしいんだ。」
そしていつもの遠くを見つめる表情になる。
「あいつが好きなのは、智なんだ。」
「・・・ああ、そうっすね。」
「え?気がついてた?」
「俺、長年BL読み続けてる男っすよ。雰囲気で分かりますって。」
「そうか、なら話は早い!結翔と智をくっつけることに協力してほしい。」
薫さんが俺の両手を取った。
「絶対両思いのはずなのに、智は彼女作るのをやめないんだ。なぜかは分からないんだけど・・・。結翔はいつも黙って見守るんだけど、端から見ててかわいそうでさ。なので、そんな状況になったら結翔は駿くんが支えてくれないだろうか。俺は智にいろいろ話していくんで。」
「分かったっす。」
俺は自分が感じた直感が間違っていなかったのがちょっとうれしかった。これは使命だな!と思った。
「だけど、薫さん。薫さんの幸せは?」
俺は思ったことをストレートに聞いた。
「俺はいいんだよ。まずはあのふたりを。じゃなきゃ俺は先に進めない。」
「優しいんっすね、薫さん。ちょっと惚れました。」
俺は素直に言った。
「おいおい、そんなこと言っちゃ駄目だ。俺はゲイだぞ。ここ俺の家だぞ、襲っちゃうことも出来るんだぞ。」
少し薫さんは笑っていた。
「まあ、そうっすよね。でも、まあ、薫さんならいいかなーとちょっと思ったっす。」
「いやいや・・・。君はノンケなんだろ?」
「どうっすかね。BL本は好きっすけど、だからと言って女嫌いではないっす。」
「でしょう?」
「でも泊まってっちゃ駄目っすか?」
「えっ?」
「実は親父に外泊しますって送っちゃったんっすよね。」
薫さんは一瞬どうしようか悩んでいるようだった。
「分かったよ。そしたら、着替え用意しておくから、シャワー先どうぞ。俺の服で入るかな・・・。」
薫さんはつぶやきながら奥の部屋に入っていった。
シャワーを浴びると脱衣所には下着と一緒にスエットの上下が用意されていた。
「お先したっす。」
「うん、よかった入ったね。」
「あざっす。ほんとに大丈夫っすか、泊まって・・・。」
俺はちょっと強引すぎたかなと思って聞き直した。
「うん、駿くんが良いなら、俺は良いよ。」
薫さんはそう言うと、シャワー行ってくるねと部屋を後にした。
ドライヤーの音がしばらくすると、いつも上げている髪が目を隠すように下ろされた状態で薫さんは戻ってきた。
「髪下ろすと、ちょっとかわいくなるっすね。」
「えっ?」
薫さんがちょっと赤くなったのが分かった。
「薫くん、あんまりからかわないでね。そうだ、ベッドルーム案内するね。」
薫さんはすっと立ち上がると、俺を部屋に案内した。
「このベッド使って良いよ。俺は向こうのソファーで寝るから・・・。」
薫さんは微笑むとおやすみと背を向けた。
「だめっすよ、そんなの。」
俺は後ろから薫さんを抱きしめた。
「しゅ、駿くん・・・?」
「一緒に寝てください。」
「だ、だけど、駿くん?」
「薫さん、良い匂い・・・。」
俺はそのまま薫さんをベッドに連れて行った。薫さんは力が抜けた様子で、そのままベッドにちょこんと座る。俺は薫さんの唇に自分の唇を当てた。
「あ・・・。」
薫さんは一瞬目を見開いたが、俺がそのまま舌を絡ませると薫さんは黙って目を閉じた。俺はそのままベッドに薫さんを押し倒した。
「だめだよ、駿くん・・・これ以上は。」
薫さんは小さな声で言った。
「俺じゃだめっすか・・・。」
「そうじゃない、そうじゃないけど。俺には君を抱く資格はないよ・・・。」
薫さんはまた遠い目をして言った。この目をされると俺は・・・。
「・・・せめて一緒に添い寝させてください。」
俺はぐっと堪えるしかなかった。
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