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第一章 始まり②
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葬儀の時もずっと僕の手を握り締めて、ずっと黙っていた。
そんな蓮の親権の話になり、義兄の両親が蓮を引き取りたいと申し出てくれたのだが、蓮が僕の手を握り締めて首を横に振り続けた。
この時の蓮は、事故のショックで話せなくなっていた。
必死に僕の手を握り締めて涙を堪える蓮を抱き締めて、僕は義兄のご両親に蓮の親権を僕にくれるようにお願いをした。
義兄のご両親は蓮の意思を尊重してくれて、蓮はこの日、僕の養子として杉田蓮から岡本蓮になった。
蓮は聞き分けの良い子で、まだ8歳なのにお店の手伝いもしてくれた。
蓮は元々、顔立ちが可愛らしかったのですぐに近所のアイドルになった。
常連さん達にも可愛がられ、僕は父親なんて偉そうな立場でいながらも…なんの苦労もしてこなかった。…そう、してこなかった筈だ。
しかし、蓮が高校に入った頃から様子がおかしい。
まず、あんなに可愛かった蓮の身長が僕を軽く追い越して183㎝までに成長していた。
バスケットをしているらしく、身体つきも運動部の引き締まった良い身体をしている。
僕は蓮を引き取ってから、ずっとお弁当作りを続けて来た。
小学校は給食があったが、中学・高校はお弁当になって僕は蓮の栄養を考えてお弁当を作り続けた。
そりゃ~、どんなに体調が悪くても、ずっとそれだけは欠かさなかった。
…のに、だ!蓮が突然
「弁当、もう作らなくて良い」
って言い出した。
「え?」
「それより、ハルは自分の身体を休めろ」
って言われてしまう。
そう…。高校生になった頃から「ハルちゃん」と呼んでいたのを、「ハル」と呼び始めた。
「こら!父親を呼び捨てにするな!」
何度も怒ったけど、蓮は無視して僕をハルと呼び続ける。
幼い頃、「ハル」と呼べなくて「ハ~たん」と可愛い声で呼んでいたのに、今や僕より低い声になって「ハル」と呼び捨てして来やがる。
まぁ、でもこんなのは可愛いんだ。
お弁当も、後から分かった(常連さんの)話では、蓮は学校でモテているらしくて、女の子が差し入れで大量に持参しているんだとか…。
今までは僕のお弁当があるからと断っていたらしい。
常連さん達から「ハルちゃん、蓮君の恋路を邪魔したらダメだよ」って笑われた。
蓮がモテるねぇ…。
僕にとっては、オムツを替えたこともあるいつまでも可愛い可愛い甥っ子であり、今では僕の息子なんだけどなぁ~。
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