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第二章 父の悩みは尽きないのです⑤
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「あ!お代は良いです。こちらこそ、蓮が大変失礼な態度を取ってすみませんでした」
深々と頭を下げると
「ダメダメ!私達が悪ふざけしたのが悪いんだから。これは受け取って。じゃないと、もう来られなくなるから」
大貫さんはそう言うと、四人分の代金を置いて行った。
四人が帰った後、気まずい空気の流れる中、綺麗な女性が
「私もお会計宜しいですか?」
と声を掛けて来た。
「あ…はい。お騒がせして、すみませんでした」
謝罪しながらお会計を受け取ると
「あの…お店は何時までですか?」
そう突然聞かれた。
「営業時間は、19時までですけど…」
驚いて答えると
「お店の片付けとかありますよね?私、あなたと個人的にお話がしたいんです。何時でしたらお時間いただけますか?」
そう言われて絶句した。
このお店を一人で切り盛りするようになって8年。積極的に女性から声を掛けられたのは初めてだった。
「あ…すみません。僕…、この後、息子と食事をしないといけないので…」
大抵、女性は息子が居ると聞くと引いてくれるので、この言葉をあえて言って見た。
すると彼女は顔色も変えず
「では…21時でしたらいかがですか?そうなると…どこかホテルで待ち合わせにしましょうか?」
と、終始、何を考えているのか読めない笑顔でどんどん話を進めようとする。
「あ…あの!どういうつもりで誘っているのか分かりませんが…すみません。お客様と個人的にお会いするつもりはないので…」
と答えると、その女性は僕の顔をジっと見つめて
「合格ですね」
そう呟いた。
「は?」
呆気にとられていると、彼女はにっこり微笑み
「では、又後日改めて参ります。」
そう言うと、代金を支払って笑顔を浮かべて帰って行った。
「な…何なんだ?今日は…変な一日だったな…」
最後の一人が帰り、お店を閉めながら独り言を呟く。
お店の片付けを終えて二階の自宅へ上がると、蓮が作っていてくれたらしく料理が置いてある。こういう所は、反抗していても変わらず優しいんだよな…。
僕が蓮の作ってくれた食事を温めようとガス台に火を点けていると、後ろから蓮に抱き締められた。
「蓮?」
驚いて振り向くと、唇を塞がれる。
「ん…!」
まるで喰い付くようなキスに一瞬目眩が起こる。
唇を割り開き、舌をねじ込んでくる。
必死に振りほどこうとしても、後ろから抱き締められて無理矢理キスをされていて動けない。
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