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一週間後、6月に入り本格的に汗ばむようになってきた。
倉科さんに診てもらって2日後には城崎も仕事に復帰し、そこから今日まで出張の資料を纏めるのに大忙しだった。
いよいよ今日から二日間、城崎との名古屋出張だ。
9時に東京駅で待ち合わせ。
昼下がりには取引先に着くように予定している。
「先輩、お待たせしました。」
「おはよう。時間通りだ、気にすんな。」
城崎と合流し、改札を通って乗り場に向かう。
何度来ても駅は広いし人は多いし迷いそうになる。
「先輩、こっち。」
人より少し背の高い城崎は、上から人の流れを確認し、出来るだけ歩きやすい方へ俺を誘った。
なんとか新幹線の乗り場に辿り着き、二人で大きく息を吐いた。
「早めに待ち合わせたから時間に余裕ありますね。」
「乗り損ねたら大コケだわ。」
「先輩とならどんなことでも乗り越えますよ、俺。」
「バーカ。お前の初出張は何事もなく完璧に成功させるって決めたんだよ。」
「先輩……!好きですっ!」
「ばっ…!?よせ!やめろ!」
人目も気にせず抱き着こうとする城崎を必死に止めた。
しばらくして名古屋方面行の新幹線が到着し、指定席の番号を見て座った。
俺と城崎は資料に目を通しながら最終打ち合わせをする。
仕事に対してとても真剣で丁寧な城崎を見ていると、あぁ、やっぱり格好良いなと見惚れてしまいそうになる。
「ちょっと休憩しましょうか。すみません、珈琲二つ。」
城崎は車内販売の売り子に声をかけ、珈琲を買った。
もちろん俺のは甘めに作ってくれる。
城崎に手渡された珈琲に口をつけ、ほっと息を吐いた。
営業部8年目。
何度も出張は経験しているが、こんなに緊張するのは初出張以来じゃないだろうか?
新人引率だって初めてじゃない。
今までの新人たちには悪いが、相手が城崎ってだけで全然心の持ちようが違う。
この出張を成功させるために仕事持ち帰って不備がないよう万全の準備をしたんだ。
絶対に成功させる。
「先輩、眉間に皺寄ってますよ。リラックス〜リラックス〜。」
「マジ?てか、城崎は全然緊張してなさそうだな。」
「多少はしてますけど、先輩と一緒なので何も心配してないですよ。寧ろ他の人と行けって言われるよりずっと心強いです。」
「買い被り過ぎだろ。」
俺はツンっと窓の方を向いたけど顔は真っ赤だ。
仕事ができる新人、兼大好きな恋人。
そんな奴から慕われてる俺って超幸せ者だと思う。
「必ず契約取りましょうね。」
「おう。」
周りに見えないように、城崎が俺の手を握った。
ドキドキ、ドキドキ。
緊張によるものか、城崎に対するものか、俺の心臓は名古屋に着くまで忙しなく鳴り続けた。
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