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ー友情ー17
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和也が真剣に望と桜井の事について考えていたのだが、急にスッキリとしたような表情を見せる望。
「さてと……そろそろ寒いし、中に入るかなーー?」
と今まで悩んでいたのが嘘だったかのように望はいつもの表情に戻したのだからスッキリとしてしまったのかもしれない。
「へ? え! だって、ほら……あのさ……その……もう、決めちまったのか!?」
「ん? あ、ああ……まぁな……」
「……で、どうする事にしたんだ?」
もう望がそんな表情をしているのだから結果はもう分かっている。 それでも人間ていうのは聞いてみたくなるもんだ。 和也は恐る恐る聞いてみる事にした。
もう、望は屋内に入ろうとしていたのか屋上にあるドアノブに手を掛けている。
まだ和也は望からその答えを聞いていないからなのか、行手を阻むかのように望が掴んでいるドアノブの上からその手を掴むのだ。
「そんな事、関係のないお前に話す必要はない事だろ?」
確かに望の言う通りなのかもしれない。
本当に望の言う通り、今の和也には関係のない話だ。 だが、望の事が好きな和也からしてみたら、今掴んでいる望の手を離したくはない。 この手を離してしまったら望は確実に雄介の元に行ってしまうような気がしたからなのかもしれない。 そして望がそのことについて話さなくても第六感みたいなのが働いてしまっている和也。 だけど、その反面、あくまで和也からしてみたら望への片想いなのだから望の事を止める事が出来ないのは確かな事だ。
「ん……まぁ、そうなんだけどさ……」
そして、和也は諦めたかのように掴んでいた望の手から離れる。 もう、ここで自分が止めていても仕方がないとでも思ったのであろう。 それに、いつまでここに居ても時間が解決する訳ではないとでも思ったのかもしれない。
和也が手を離すと望の方は何事もなかったかのように、そのまま屋内へと入って行ってしまった。
ただ、和也が望の事を好きなだけであって告白もしていなければ付き合ってもいない状況なのだから今の和也には望を止める事は出来ない。 だから、和也は仕方なく望の手を離したというところだ。
これが、もし、自分と望が付き合っていたのなら、いや、せめて、和也が望に告白をしていたのなら、望が桜井の所に行ってしまう事を止められていたのかもしれないのだが、今の和也にそんな事は出来る訳もない。
和也は望が行ってしまった後、右手に拳を握りしめる。
それだけ今の事は和也からすると悔しい出来事だ。 確かに自分が望に告白をしてなかったのが今回、望を止められなかった要因だ。
今こう色々な感情が和也の中で渦巻いているのであろう。
そして、その握った拳を壁へと打つける。
ただただ自分の手が痛くなるだけで心に空いた穴は塞がる事はなかった。
和也は息を深く吐くと、その場へとへたり座り込む。
今の自分は本当に何も出来なかった。
「これから、俺……望と一緒にこんな気持ちのままで普通に接して行けるのかな……?」
と1人呟いてもそれはただ空気に消えて行くだけだ。
そして、その会話以降、2人の間には会話がなくなってしまっていた。
2人の会話はなく、ただただ仕事をしている日々だ。
でも、仲が悪くなった訳ではない。
ただ単に会話がなくなっただけだ。
会話がなくなったという事は仲が悪くなったともいう事でもある。
そんな時、いつものように2人は回診で病室を回っていた。
「次は雄介の所だな……」
そう廊下を歩きながらそういう風に言う望。
「ん? あ、ああ……?」
こう何か急に何かが変わったように思えるのは気のせいだろうか。 ついこの間まで望は桜井の事を桜井と言っていた筈なのに今ではもう名前の方で呼んでいたのだから。
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