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「ね、歩さん。今日は仕事休みで良いんだよね?」
「あ、はい・・・。」
刀と刃の漢字の違いは、刀にやいばの部分を指した「、」指事がつく。
そしてその刃物の部分を心臓に突きつけられても冷静に考え、対応する強い心を現したのが「忍」という文字らしい。
・・・強い。
本当に、この人、強い。
「歩さん!一番テーブルに持って行って!」
「はい!!」
土日は休みの会社員である俺は、現在、忍さんにこき使われていた。
「あれま、忍ちゃん、新しいアルバイトさんかい?」
常連と思われるばあちゃんが店に入ってきての開口一番の発言に、あろうことか忍さんはシレッとこう答えた。
「ううん、愛人。」
ええ?!
空いている席を案内しようとしていた俺は、持っていたお盆を落としそうになった。
「おやまあ、お熱いねぇ。」
「ちょ!!」
ばあちゃんからケツを揉まれて縮み上がった。
「おばちゃん、それぼくのだからやめてよね。出入り禁止にするよ?」
「そりゃ困る。」
笑い出したばあちゃんに、忍さんは無言で手を振った。
さっさと座れということだと思う。
不遜な態度を取っても、昔からの仲なのかばあちゃんは怒らなかった。
「えっと、ご注文は・・・。」
「コーヒー。」
来る人来る人、みんなコーヒーを注文する。
そして今時珍しいサイフォンで淹れたコーヒーを、嬉しそうに飲んでいくのだ。
確かに凄く美味かった。
料理も、コーヒーも、この大学生風の兄ちゃんは完璧に提供する。
飄々とした表情なのに、カウンターの下では両手が恐ろしいほどの速さで動き続けていた。
「玉子サンドも。」
「はい。」
玉子サンド、ナポリタン、カレーライス。
ピザトースト、ホットケーキ。
王道のザ・喫茶店。
「忍さん、玉子サンドとコーヒーです。」
「はいはい。」
喫茶店、舐めてた。
めちゃくちゃ忙しい。
「歩さん、おしぼりとお水は?」
「あ!」
さっきもナポリタンとコーヒーのお客さんに、フォークと粉チーズを持っていくのを忘れたばかりだ。
今まで当たり前に受けていた給仕を、いざ自分でやることになった途端に動けなくなることに驚いた。
俺ってこんなに使えないヤツだったのか?
それにしても、この忍さんは強い。
忍さんの言葉が本当なら、俺はこの人と、その・・・アレをしちゃったはずだ。
二日酔いで体がダル重いのと、体の水分量がオカシイせいかシャキッと動けない俺が言うのは変だけど、夜の生活は強い方だ。
正気なら、セックスが一回で終わるはずがない。
なのに・・・。
「歩さん、会計!!」
「あっ!」
慌ててレジカウンターに向かいながら、俺は考えることを放棄した。
「えっと1000円からですね、おつりおつり・・・っ!」
慣れない仕事に集中することにした。
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