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眠れない夜は、長い。
ここ最近、元嫁に別れを切り出されてからというもの、眠れない日が続いていた。
離婚届に署名した日から、いや、本当のことを言えば、話を聞く前から分かっていたのかもしれない。
仕事から帰ってくると、何かしら部屋の雰囲気が変わっていたからだ。
何が違うのか、違和感はあるものの気にしていなかった。
今にして思えば、少し前から嫁の荷物が減っていたんだと思う。
目を逸らし続けた代償が、あのペラペラの離婚届だ。
笑ってしまうくらい、簡単な書類だった。
署名して、その三日後には離婚届の受理通知が届いた。
寝れなくて、アルコールを飲んだ。
寝れなくて、ずっとテレビをつけていた。
違う世界にハマれば寝れるんじゃないかと、年甲斐もなくマンガ本を読み漁った。
久しぶりに寝れたんだ、昨日の夜。
加藤の体温と、寄せられる心配が心地良かった。
久しぶりに腹いっぱいメシを食って、しこたま飲んで。
そして、それでも足りなかった愛情を・・・忍で埋めたのかもしれない。
・・・忍を、利用したんだ。
350mlのビールは、一瞬で無くなる。
空になった缶を、音を立てないように静かにテーブルに置いた。
弱ぇな、俺。
残念な大人になっちまった。
寝室の扉を眺めて、ため息をついた。
償わないと。
今の俺に出来ることは、すみれさんの婚約者としておばあちゃんの前で振舞うこと。
そして、忍がきちんと食事ができるように環境を整えてやることだけだ。
店、どうするんだろう。
時計を見ると、朝は目の前まで迫っていた。
忍を抱くときに脱ぎ散らかしたTシャツとパンツを履くと、ソファにごろりと横になった。
俺は左腕を眼球の上に置いて、やってきてしまう朝を呪った。
今日も店を開けるなら手伝おう。
笑顔の忍を想像して、キュンとなった。
笑った時に見える八重歯が、愛おしく思い出されたのだ。
おっさんが何、キュンとしてんだ!
ギュッと唇を噛むと、狭いソファの上で体を縮めた。
この汚らしい気持ちが何か分からない。
喉から手が出るほど、今、忍を抱きしめたかった。
甘い香りのする首筋に鼻を押しつけて、女性とは違う硬い体を抱き込みたかった。
忘れろ!
また汚すつもりか?
大人のエゴで、また抱くのかよ!!
叫びたいほどに痛む胸は、当分収まりそうになかった。
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