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生きとし生けるものには、必ず死はやってくる。
それは、人によっては早く訪れるし、逆に100を超えてもお元気な方はいる。
そして悲しい事に、長く生きていれば、それだけ葬式の数も体験する。
だけど、生を受けた数週間後に人生初の別れを体験するなんて、残酷過ぎた。
「忍ちゃんは未熟児でね、産まれてからも暫くは入院してたんだ。」
赤ちゃんには、お母さんのおっぱいが必要だ。
退院したすみれさんは、忍のために毎日、自分のお乳を絞って病院に届けに行っていたそうだ。
そんな中での、
「即死だったらしいよ。相手のトラックの運転手は怪我ひとつ無かったらしい。」
肉が網の上で焼け焦げていく。
上等なお肉なのに、もう食欲も湧かなかった。
「だから、ママさんとマスターが育てた。」
可愛い愛娘の遺した、男の子。
可愛がって貰えたのかと思えば、そうでもなかったらしい。
「・・・側から見て、厳し過ぎた。娘を育て間違えたと言って、忍ちゃんは厳しく厳しく育てられたんだ。」
「そんな・・・っ!」
ばあちゃんは、両手をテーブルの上で組んだ。
祈るような動きに、俺は自然に浮かんだ涙をそのままに見つめた。
「キツかったんじゃないかな・・・良い子を求められて、良い子を演じないといけないって。」
他人様の教育方針に口は出せない。
出せないけど、ばあちゃんの苦しそうな顔を見ていると、余程厳しい育て方をされたのが分かった。
「ママさんもマスターも良い人なんだよ。だけど、孫に対する接し方じゃなかった。・・・あの子は、愛情に飢えていたんだ。」
自分は、パチンコの景品のお菓子を、こっそりあげることぐらいしか出来ない。
そんなものでもね、あの子はアザだらけの腕を伸ばして、おばちゃんありがとうと、ふたりにバレないように手を握ってくれたんだ。
「!!」
目の前に情景が浮かんだ。
子どもらしい悪戯をすることもなく、少しでも対応を間違えたら腕を抓られる。
抱きしめて欲しい年頃に、きっと抱きしめるのではなく、折檻されて育った。
あんまりな話に、俺は思わず両手で顔を覆った。
「・・・それでも忍ちゃんは、真っ直ぐ育ったよ。」
強かった。
忍は、強くあり続けたんだ。
側にいたら、抱きしめてあげるのに。
いっぱい頭を撫でてやりたかった。
「忍ちゃんが高校一年生の頃、マスターが亡くなった。」
「え。」
思わず顔を上げると、ばあちゃんは歯の抜けた口を震わせていた。
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