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と、携帯が震えた。
見ると悪友からだ。
「・・・電話なんて珍しいな。」
『うっせぇ、ボケ!お前、「また今度な。」の後、全然連絡してこねーじゃねーか!』
ガミガミと耳元で叱られて、思わず笑ってしまった。
「すまん、加藤。忘れてた。」
『何ーッ?!』
お前、昨日の話だぞ。ボケッ!アホッ!
散々な言われようだけど、お陰で切迫詰まった気持ちが落ち着いた。
「なあ、加藤。セックスから始まる恋ってあると思うか?」
『はあ?お前もうマッチングアプリ始めるのか?』
「違う、違う。」
脳裏に浮かぶのは、忍の生意気な顔だ。
「金曜の夜、加藤と別れた後に拾われたんだ。」
『え、その女に食われたのか?』
女じゃないし、食われたんじゃなくて食ったんだけど。
「んー・・・、で、昨日はずっと一緒に居て、なのに今朝、置いてけぼりされた。」
『ブハッ!逃げられたのか!』
そう、忍は逃げたのだろう。
俺みたいな奴に付き纏われたら大変だ。
「・・・で、今、その子に会いたくて足掻いてる最中。」
電話越しの加藤が、スッと黙り込んだ。
「なんか、胸がチクチクするし、ヒリヒリ痛い。」
そう、痛くて仕方がない。
この痛みを止めるには、忍が必要だ。
『・・・お前、本気になったんだな。』
「かも。惚れっぽいタイプじゃねーのにな。」
惚れっぽいのは、加藤の専売特許だった。
俺は、付き合い出してからジワジワと好きになっていくタイプだ。
なのに・・・。
『お前、どこいんの?』
病院の名前を告げると、加藤の声が上擦った。
『相手はナースか?!』
「違うよ。」
速攻で返すと、加藤は『女医か!!』と叫んだ。
「違うよ。ただの患者の孫。」
『なるほど、周囲から固めるのか。』
ふふ、そんな策士めいたことは出来ない。
「・・・ここで待ってたら会えるかなって。病院の入り口で待ってる。」
でも。
「面会時間が終わったから、今日は見舞いに来ないのかな。」
時計は、面会時間の終わりを指していた。
だから、もう今日は諦めるしかないのだ。
そして明日からは平日。
つまり、仕事のある平日はこの面会時間に合わせて張り込む事はできない。
忍を二度と捕まえることができないような気がした。
『・・・そっち行く。お前、待ってろ!』
「え?」
通話が切られて、俺は呆然とスマホを見つめた。
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