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加藤の家から、ここまでは遠い。
すぐに出たとしても一時間近くかかるだろう。
俺は暗くなった空を見上げた。
もうすぐ季節は巡り、空は雨ばかり降らすようになる。
それが終わったら、灼熱の夏だ。
コンクリートに覆われた都会は、むせ返るような熱気で息を吸う度に肺まで焼けそうになる。
それでも、夏は嫌いじゃない。
冬よりも夏は楽しい思い出が多いからだ。
入道雲を見れば、海水浴を思い出す。
かき氷を見れば、悪友たちと早食いして頭痛に転げ回った日を思い出した。
学生を見たら夏休みの宿題を思い出すし、日焼け止めの匂いがしたら、友だちとセミを追いかけてションベン垂らされた日を思い出す。
だから、嫌いじゃない。
この思い出の中に、忍の記憶を作りたいと思った。
金曜・・・いや記憶ありの状態だと、昨日会ったばかりの忍に固執する理由は、きっと恋だ。
相手が男なのに、不思議なくらい違和感は無かった。
そもそも抱いた過去がある。
建物の壁に背中をつけて、ふぅっと息を吐いた。
だいたい、何で抱けたのか。
加藤や、他の男に欲情した事は一度もない。
少なくとも他人のモノなんて、好き好んで見たいものではなかった。
おっぱいもないし、女性のような柔らかな体でもない。
なのに。
「・・・忍だから、か?」
しっかり勃起した。
忍を可愛いと思った。
大人の汚いエゴで抱いて、そんな自分には吐き気しかしないが、忍が許してくれるならこの気持ちを確かめたいと思っている。
忍が逃げたのは、俺への拒絶だと思う。
忍の気持ちを無視して、ズカズカと土足で入り込んだ。
だから、逃げた。
忍の気持ちを聞きたい。
俺が側にいるのは、嫌か、忍の気持ちを知りたい。
「・・・お前、大丈夫か?」
「え?」
空を見上げていた俺はびっくりして瞬きをした。
「加藤・・・お前、飛行機でも使ったのか?」
「彼女ん家から来た。・・・びっくりさせんなよ。」
汗だくの顔で仁王立ちした加藤は、ニッと笑ってみせた。
「俺は友だちの危機に駆けつけるヒーローだろ?」
「ブハッ・・・間違いねぇな。」
電話を切ってから約10分。
俺の前には友だち想いの優しい加藤が、息を切らせながら頼もしい笑顔を向けてくれたのだった。
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