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「で、その忍ちゃんのことが好きだと自覚したと?」
加藤とふたり近所のカラオケ店へ篭って、根掘り葉掘り状況を話した後の台詞だ。
さすがコロナ禍、普段なら満室のはずのカラオケ店は空室が目立っている。
遠くで聞こえる誰かの歌声をBGMに、焼肉屋までの顛末を話したところだった。
「気付いたのは、さっき。空を見ながら、胸がチクチク焼け焦げるなぁと・・・。」
「へぇ。・・・なんか変わったな?」
俺の恋愛遍歴を知っている加藤は、こてんと首を傾げた。
「なにが?」
「うんにゃ。何でもない。」
うんにゃ、とは古典の言葉で『いいえ』という意味だ。
加藤は俺たちの前で、良くその言葉を使っていた。
昔を思い出して、なんだか勝手に微笑みが浮かんだ。
「なんだよ、ニヤニヤして。」
「いや、昔を思い出した。」
大学のとき、ふたりで彼女を連れて、旅行に行った。
その時、加藤は見事!スーツケースを新幹線に置き去りにしたのだ。
「・・・あの時のスーツケース置き去り事件を思い出したんだ。」
「ああ、福岡まで行っちゃった事件。」
ふたりで吹き出した。
「結局、あれ目的地を福岡に変更したんだよな。」
「それで本番の豚骨ラーメン食えただろ!」
俺たちの悪ふざけで、スーツケースの回収先を旅行先に変更したもんだから、彼女たちはめちゃくちゃ怒った。
「馬鹿ばっかりしてたなあ。」
「おー。でも楽しかった。・・・なあ、その忍ちゃんって大学生って言ってたよな?」
俺は、テーブルに乗るナポリタンスパゲティを見ながら頷いた。
「そ。なんか小難しそうな勉強してた。」
「・・・名前で検索してみたら?」
加藤の言うとおり研究室のページに、もしかすると名前があるかもしれない。
俺は恐る恐る名前を入力した。
頼む、ヒットしてくれ!
念を込めて、検索ボタンを押した。
エイッ!!
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