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「いいか、これはな!」
加藤がソファの上に立った。
「暗号文だ!」
突きつけられた人差し指を潜って俺は、向かいのソファに座わりスパゲティを手に取った。
ぱさぱさしてそうなそれは、あまり美味そうには見えない。
やっぱり忍が作ったナポリタンが恋しかった。
「おい、無視すんな!」
フォークでくるくると巻き取りながら、ひとり考えに耽った。
・・・忍との記憶か。
何か他に思い出さないかな。
「おーい!新里ぉ。」
ソファから降りてきた加藤は、俺の肩を揺さぶった。
「絶対、これ暗号文なんだって!」
「・・・その根拠は?」
胡乱な目で見上げると、加藤の目が煌めいた。
「意味不明過ぎるから!」
ぽりぽりと首筋を掻いた。
「・・・じゃあ、どういうことが書いてあるんだ?」
「それをこれから考えるんだよ!」
聞かなきゃ良かった。
俺は薄っぺらいハムをフォークで突ついた。
「・・・なるほど。」
とりあえず食べ終えるまでは、加藤の解析力に賭けることにした。
------------※ ※ ※------------
「まずな、『賞味期限切れの卵』は存在していたのか?」
「してたんじゃないかな、嫁さんが冷蔵庫管理してたから、よく分からないけど。」
「確かめてないのか!」
頷いた。
米を出すためと、マヨネーズを入れるために冷蔵庫は開けたけれど、わざわざ確かめてもいない。
「うーん、もしかしてその卵を食って腹を壊したんじゃないのか?」
「恨んで、『賞味期限切れの卵って、どういうこと?』か。」
ピーマンを突っついた。
上手く掬えなくてイライラする。
「もしくは、卵を買いに行ったとか!」
「ねーな。」
あ、掬えた。
「なんで?!」
「土地勘ないのに、卵を買いに出るか?」
「特売日だったのかもしれない!」
味に飽きてきた。
忍が作ったナポリタンは、単調なケチャップ味じゃなかった。
でもこれは、単純すぎて飽きてしまう。
テーブルのタバスコを取って振りかけた。
『賞味期限切れの卵って、どういうこと?』
たしかに謎の言葉だ。
「・・・朝メシは、堅焼きの目玉焼きとツナ缶が用意されてた。」
「半熟じゃなくて、堅焼き?」
「そう。」
タバスコの瓶をテーブルに戻した。
「他には?!」
「ツナ缶のところにマヨネーズが置いてあって、インスタントコーヒーが準備されてたけど。」
「ツナマヨかよ!」
うーん、かけ過ぎた。
舌がピリピリする。
「現場100回!とにかく卵の賞味期限を見てみるぞ!」
「あ。」
食べかけなのに俺は加藤に押されて、無理矢理部屋から出された。
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