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「・・・ここら辺だったかな。」
記念すべき現場100回の1回目は、加藤と別れた後にビールを一人飲んでいた小さな公園だ。
今シラフで見てみると、公園というより広場と言った方が近い気がした。
夜の帳が下りた広場には、すでに先客も多い。
こうして見ると、良い大人が缶ビールを片手に集い合っているのが凄くダラシなく見えて、悲しくなった。
俺も、あの日はここの一員だったんだ。
「ここで拾ってもらったのか?」
「最終的な記憶は飛んでるけど、酔ってるからそう遠い範囲じゃないと思う。」
言い方は悪いが、忍の狩場がここであれば、住まいは移しても狩場は簡単には変えないだろう。
それに、ここは喫茶店もホテルも近かった。
「・・・結構、いるんだな。」
「ああ。」
酒を提供する店は、提供していい時間が定められている。
だからこそ、こうやって酒を片手に広場に集まるのだ。
昔じゃ考えられない事態が発生している。
どこかを規制すれば、規制のどこかで逃れようとする。
「加藤。校則って、覚えてるか?」
「ん?・・・ああ。」
今にして思えば、馬鹿な校則がいっぱいあった。
髪色、髪型、裾の丈。
『ひとは見た目では判断してはいけません。差別はダメです。』
だけど、先生たちは『見た目』で判断していた。
青春時代は、ちょうど反抗期もあって息苦しさを覚えていたことを記憶している。
・・・リクルートスーツも、結局はそういうことかな。
いっそ、大手の企業が『見た目』を気にしないと言ってくれたらいいのに。
いっそ、リクルートスーツはやめて、普段着で面接するよう宣言したらいいのに。
今にして思えば、社会は『見た目』でしか判断しないということを教えていたのかもしれない。
そう考えれば校則も理解できるのだ。
「やっぱりさ、そういうのって鬱屈するよな。」
「あ、あぁ・・・。」
加藤が居心地悪そうに身じろぎした。
夜はまだ始まったばかりだ。
忍はやってくるのか分からないまま、俺たちは広場に立ち続けていた。
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