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寝息を立てはじめた忍の姿に、歩は少し安堵した。
弔問に訪れる来訪者へ、ひとりひとり丁寧に大人のように対応していた忍は、側から見ても気を張っている事が分かるほど、頬が緊張で強張っていた。
一切の悲しみを見せず、淡々と対応する様子がかえって痛ましくてならない。
とはいえ、喪主としての立場は代わってあげることが出来ない。
出来ないなりに、俺は自分のできることを手伝っていた。
傷付いた忍の傷が少しでも癒えるように、背中を優しく摩りながら、さてどうしたものかと頭を悩ませた。
うーん。
甘えていいかと言いながら、まだどうにも壁がある気がする。
好きだと言っても、『ふぅん』と受け流されるのは、本気に取られていない証拠だ。
うーん・・・。
何しろ、テナント募集中を体験した後だ。
絶対に、俺の手からスルリと逃げだしそうな気がしてならない。
どうやったら本気で好きだと分かってもらえるのか、どうやったら、本気で忍のことを守る気満々なのが理解してもらえるのか、マ・ジ・で!心底悩んでいる。
うーん。
祭壇を見ると、犯罪級ともいえる昔の写真を遺影に選んだ忍のおばあちゃんが、頬を艶々とさせた二十歳ソコソコの娘の顔で元気いっぱいの笑顔を振りまいていた。
・・・なんともお茶目なおばあちゃんとは、お元気なうちに会いたかったと思う。
『え、この写真?!』
『うん。おじいちゃんが亡くなった時に、自分の時は絶対この写真を使うようにって、念押しされてたから。』
『・・・なるほど。』
・・・目のあたりとか、口元はおばあちゃん似だな。
遺影を眺めての感想だ。
さて、おばあちゃん。
この頑なな忍の殻は、どうやったらこじ開けられますかね?
・・・そもそも俺の事を嫌いという可能性は、とりあえず置いておこう。
うーむ。
一発逆転ホームランが必要だ。
忍の気持ちに叩き込んで、わかってもらうしかないけど・・・。
しれっと自分には厄病神が憑いてるなんて言う子だもんなぁ。
「ん?」
厄病神・・・?
歩の瞳が光った。
そうか!厄病神か!!
方針が決まった。
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)
さあ、PDCAサイクル打ち込んでやろうじゃねーか。
まずは綿密な計画だ。
忍をギャフンと言わせてやる!
斎場で不謹慎ともいえる不敵な笑顔を浮かべた歩は、寝息を立てる忍の背中をあやしながら、じっくりと計画を練ったのだった。
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