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「・・・終わったな。」
「うん、終わった。」
火葬場で、疲れた顔で笑い合った。
コロナ禍だからと密を避ける配慮をした家族葬だったが、会葬をご遠慮くださるせいか、弔問客がやたらと多かった。
「おばあちゃん、愛されてたな。」
「うん、ひっきりなしに色んな人が来てくれた。」
商売をしていたせいもあるのかもしれないが、おばあちゃんの人柄に寄るところも多分にありそうだった。
・・・こんなにハツラツとした笑顔の人が、忍をひたすらただ厳しく育てるかね?
なんとなく解せない。
忍は、もっと愛されていた自覚が芽生えていてもおかしくないのだ。
なのに、自分を『厄病神』発言するあたり、うまくおばあちゃんとの疎通がとれていなかった証だった。
「・・・なあ忍。」
「なに?」
骨壷を抱えた忍に、ひとつ提案をした。
「メシ食って帰ろう。」
「え?!これ持って?」
「持って。」
骨壷に位牌に遺影。
結構な荷物だし、扱い方が雑だとバチが当たりそうだ。
だけど、ちゃんと対応してくれる店も知っていた。
「任せろ。おばあちゃんも喜ぶと思うぞ。」
そう言うと、俺は電話で予約を入れたのだった。
------------※ ※ ※------------
「・・・ここ?」
「そ。」
創作日本料理、にし川。
会社の接待で使ったことのあるお店だ。
事情を説明していたからか、離れには祭壇が作られていた。
「ありがとうございます。」
「いいえ、これくらい。」
綺麗で優しい女将さんは、笑顔でお辞儀をして襖の奥に消えて行った。
「・・・ここ。」
「ん?良いところだろ?」
「うん。」
夜は結構なお値段のコースもあるが、基本的には庶民でも手が出る金額だ。
これは、大将の気軽に食べて欲しいといった気持ちを反映している。
祭壇に置いたおばあちゃんに手を合わせてから、俺たちは向かい合って座った。
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